
脚本の書き方のルールは、シーンの場所と時間を示す「柱」、人物の動きや情景を書く「ト書き」、人物名に続けて言葉を書く「セリフ」の3つが基本です。日本では200字詰め原稿用紙(ペラ)に縦書きで書くのが伝統的な書式で、ペラ1枚がおよそ30秒前後の尺にあたります。
このページでは、日本のシナリオ書式を一つずつ確認したうえで、よく使う記号、原稿用紙とワープロでの設定、枚数と尺の関係、準備稿と決定稿の違いを説明します。海外の映画祭や英語圏の制作会社に出すときのハリウッド形式もあわせて紹介します。
日本のシナリオ書式の基本
日本の脚本は、もともと200字詰め原稿用紙(20字×10行)に縦書きで書かれてきました。この1枚を業界では「ペラ」と呼びます。パソコンで書く場合も、コンクールでは「20字×20行の縦書き」や「400字詰め換算で何枚」と指定されることが多く、字数と行数をそろえることが書式の土台になります。
| 要素 | 役割 | 書き方 | 例 |
|---|---|---|---|
| 柱 | シーンの場所と時間 | 行頭に○を付け、場所、時間帯の順 | ○商店街・八百屋の前(夕) |
| ト書き | 動き、表情、情景 | 3字下げで、短く現在形 | 陽菜、自転車を止めて店先をのぞく。 |
| セリフ | 人物の言葉 | 人物名のあとに「」 | 陽菜「お父さん、まだ開けてるの」 |
柱(シーンの見出し)
柱は行頭の○に続けて、場所、時間帯を書きます。時間帯は(朝)(昼)(夕)(夜)(深夜)のように括弧で添えるのが一般的です。同じ建物の中で部屋を移るときは「○同・台所(夜)」のように「同」を使います。場所か時間が変われば、必ず新しい柱を立てます。くわしくは柱書きのガイドをご覧ください。
ト書き
ト書きは柱やセリフより3字ほど下げて書きます。書くのはカメラに映るものと、マイクが拾う音だけです。「陽菜は寂しい」と心情を説明するのではなく、「陽菜、シャッターの閉まった隣の店を見る」のように、動きや小道具で気持ちを見せます。1つのト書きは2〜3行にとどめ、絵が変わるところで改行すると読みやすくなります。
セリフ
セリフは行頭に人物名を書き、すぐ後に「」で言葉を書きます。セリフの終わりに句点「。」は付けないのが慣例です。2行以上にわたるときは、2行目以降の頭を1字下げます。言い方の指示を入れたいときは、セリフの頭に(小声で)のように括弧で添えます。この括弧書きについてはト書きと括弧書きのガイドで扱っています。
人物表
本文の前に、登場人物の名前、年齢、ひとことの説明を並べた人物表を付けます。読む人が最初に顔ぶれをつかめるうえ、香盤表を作るときの基礎資料にもなります。人物の初登場の書き方は人物紹介のガイドにまとめました。
よく使う記号と表記
- (M):声に出さない心の声(モノローグ)。例:陽菜(M)「言えるわけない」
- (N):ナレーション。
- (声)または(オフ):画面に映っていない人物の声や、電話の向こうの声。
- × × ×:同じ場所のまま、少し時間が飛ぶことを示します。
- (回想):過去の場面であることを柱に添えます。書き方は回想シーンとモンタージュのガイドで説明しています。
- F・I/F・O:フェードイン、フェードアウト。O・Lはオーバーラップ。多用せず、意味のある場面転換にだけ使います(場面転換のガイド)。
- スーパー:画面に重ねる文字(テロップ)。例:スーパー『昭和六十年 夏』
例:日本の書式で書いた短いシーン
柱・ト書き・セリフだけで書いた、オリジナルの短いシーンです。ワープロで横書きにしていますが、字下げの考え方は縦書きの原稿用紙と同じです。
○商店街・八百屋「八百松」の前(夕) シャッターの目立つ通り。一軒だけ灯りがついている。 高橋陽菜(24)、自転車を止めて店をのぞく。 店主の高橋松男(58)が、売れ残りの大根を並べ直している。 陽菜「お父さん、まだ開けてるの」 松男「(顔も上げずに)七時までが店だ」 陽菜、隣の閉じたシャッターを見る。 陽菜「隣の魚屋さん、先月でやめたんだって」 松男「知ってる」 松男、大根を一本、陽菜の自転車のかごに入れる。 ○高橋家・台所(夜) まな板の上に、さっきの大根。
- 柱は○、場所、時間帯の順。店の名前は「」で添えています。
- 人物は初登場のト書きでフルネームと年齢を書き、以降は名前だけにします。
- (顔も上げずに)は言い方の指示。セリフの頭に括弧で入れます。
- 大根をかごに入れる動きで、父の気持ちをセリフなしに伝えています。
原稿用紙とワープロでの書式設定
手書きなら市販の200字詰め原稿用紙を使います。ワープロで書くときは、応募先の指定に合わせて次のように設定するのが一般的です。
- 用紙:A4横、縦書き。
- 字数と行数:20字×20行(400字詰め1枚分)が多く、ペラ換算なら20字×10行。
- フォント:明朝体の10.5〜12ポイント。くわしくは脚本のフォントのガイドへ。
- ページ番号:下中央などに通し番号。表紙は数えないのが普通です。
- 表紙と人物表、あらすじ:応募要項で求められたら本文の前に付けます(表紙の書き方)。
枚数と尺の目安
日本のシナリオでは、ペラ1枚がおよそ30秒前後、400字詰め1枚がおよそ1分といわれます。コンクールの規定を見ても、60分前後のテレビドラマでペラ100〜120枚あたりが目安です。セリフの多いページは早く、アクションの多いページは長くなるので、あくまで平均の目安です。計算の仕方は脚本の枚数のガイドで説明しています。
準備稿・決定稿とシーン番号
コンクールや企画段階の脚本と、撮影に使う台本とでは、付けるものが違います。撮影用の台本は、準備稿で打ち合わせをし、直しを重ねて決定稿になります。決定稿では各シーンの柱の頭にシーン番号(1、2、3…)が入り、スタッフは「シーン12の撮影」のように番号で話します。コンクールに出す原稿には、指定がなければシーン番号を付けなくてもかまいません。稿の重ね方は決定稿と改訂稿のガイドで扱っています。
海外向けのハリウッド形式
英語圏の映画祭や制作会社に出す脚本は、ハリウッド形式(アメリカの業界標準)で書きます。考え方は日本の書式と同じで、1ページがおよそ1分になるように紙面が決まっています。

- 用紙はUSレター(8.5×11インチ)、フォントはCourierの12ポイント、横書き。
- 余白は左1.5インチ(約3.8cm、綴じ金具の分)、上下と右はおよそ1インチ。1ページは約55行です。
- シーン見出し(INT. 内/EXT. 外、場所、時間帯)とト書きは左余白から全幅で書きます。
- 人物名は大文字で中央寄り、セリフはその下に幅の狭い段で組みます。日本のように名前「セリフ」と1行には並べません。
- CUT TO: などの場面転換は右寄せ。ページ番号は2ページ目から右上に入れます。
同じ八百屋の場面をハリウッド形式で組むと、次のようになります。柱はシーン見出しに、人物名はセリフの上の独立した行に、言い方の指示はその下の括弧書きの行になります。
EXT. 商店街・八百屋「八百松」の前 - 夕方 シャッターの目立つ通り。一軒だけ灯りがついている。高橋陽菜(24)、自転車を止めて店をのぞく。 @陽菜 お父さん、まだ開けてるの。 @松男 (顔も上げずに) 七時までが店だ。 > CUT TO: INT. 高橋家・台所 - 夜
セリフがページをまたぐときの(MORE)と(CONT'D)など、ハリウッド形式に特有の決まりは脚本の続き表記のガイドで説明しています。
初心者がやりがちな書式の間違い
- ト書きで心の中を説明してしまう。映らないものは書けません。
- 柱を立てずに場所が変わる。読む人もスタッフも、どこで何が起きているのか見失います。
- ト書きが5行も6行も続く。絵が変わるところで区切ります。
- すべてのセリフに言い方の指示を付ける。演技の余地は俳優と監督に残します。
- カメラの指示を細かく書き込む。カット割りは監督の仕事で、決めるのは絵コンテの段階です。
- 枚数を合わせるために字数や行数を変える。枚数が尺の目安として使えなくなり、規定違反になることもあります。
Scenaloomで書く
Scenaloomの脚本エディターは、入力に合わせて柱(シーン)、ト書き、登場人物、括弧書き、セリフの書式を整えます。表示はハリウッド形式とアジア形式から選べます。アジア形式ではシーンに番号が付き、そのシーンの登場人物を並べた行が入り、セリフは「名前:セリフ」の形で組まれます。日本の伝統的な書式(○の柱、名前「セリフ」)とは見た目が少し違うことを覚えておいてください。
なお、Scenaloomは原稿用紙の形式や縦書きでの出力には対応していません。コンクールに出す原稿は、Word(.docx)で書き出してから応募要項の書式に整えてください。ほかのアプリで書いたテキストがあるなら、無料の脚本フォーマッターに貼り付けて書式を確かめることもできます。無料で書きはじめる
よくある質問
脚本の書き方の基本ルールは何ですか?
柱(○場所(時間帯))、ト書き(3字下げで動きと情景)、セリフ(人物名「言葉」)の3つで、画面に映るものと聞こえるものだけを書くことです。場所か時間が変わったら新しい柱を立て、心の中はト書きで説明せず動きで見せます。
脚本のセリフに「。」は付けますか?
日本の脚本では、セリフの最後に句点を付けないのが一般的です。「……」や「!」「?」は使えます。ただし決まった法律があるわけではないので、作品の中で表記をそろえることのほうが大切です。
シナリオの書式は縦書きでないといけませんか?
日本のコンクールでは縦書きを指定されることが多いので、応募するなら縦書きで整えるのが安全です。社内の企画や共同作業の段階では横書きで書く人も多く、最後に縦書きへ組み直してもかまいません。
脚本のト書きは何字下げればいいですか?
原稿用紙では3字下げがよく使われます。柱とセリフは行頭から書き、ト書きだけを下げることで、ひと目で区別できるようになります。応募要項に指定があればそちらを優先してください。
海外向けの脚本はどの形式で書けばいいですか?
英語圏ではハリウッド形式が標準です。USレター用紙にCourier 12ポイント、左余白1.5インチで、シーン見出し、ト書き、大文字の人物名、セリフの段をそれぞれ決まった位置に置きます。Scenaloomではハリウッド形式に切り替えて書き、PDFやFinal Draft形式で書き出せます。