リネンの机に置かれた脚本の原稿と鉛筆、クリップ

柱書きとは、シナリオの各シーンの頭に置く見出しで、そのシーンがどこで、いつ起きるのかを示す一行です。「○喫茶店・店内(夜)」のように、行頭の○に続けて場所、時間帯の順に書きます。場所か時間が変わるたびに新しい柱を立てるのが、脚本の書き方の基本です。

柱は読む人のための目印であると同時に、撮影の段取りの土台でもあります。助監督や制作部は柱を一本ずつ拾って香盤表を作り、セットを建てるのか、ロケに出るのか、昼の光が要るのか、どのシーンをまとめて撮れるのかを決めます。だからこそ、柱には決まった書き方があります。

柱の基本の形

  • ○:行頭に付ける印。ここから新しいシーンが始まることを示します。
  • 場所:大きな場所から小さな場所へ、「・」でつなぎます。例:○吉田家・台所。同じ場所に戻るときは、毎回同じ呼び方にします。
  • 時間帯:(朝)(昼)(夕)(夜)(深夜)などを括弧で添えます。物語や撮影にとって意味があれば、(早朝)(明け方)(翌日・昼)のように細かく書いてもかまいません。
○フェリー乗り場・待合室(夜)

○丘の上のぶどう畑(早朝)

○市民病院・非常階段(昼)

「同」を使った柱

直前のシーンと同じ建物や敷地の中で場所が移るときは、建物名をくり返さずに「同」と書きます。読む人は同じ建物の中の別の場所だとすぐにわかり、柱も短くなります。

○港町図書館・閲覧室(夕)
   理沙、返却本を棚に戻している。

○同・書庫(夕)
   薄暗い。理沙、懐中電灯で背表紙を照らす。

○同・表(夜)
   閉館後。玄関の灯りが消える。

時間の経過と連続するシーン

前のシーンからそのまま続く動き、たとえば人物が部屋から廊下へ走り出る場面では、時間帯を前と同じにして柱を立てれば足ります。同じ場所で少し時間が飛ぶときは、柱を立て直さずに「× × ×」を入れます。日をまたぐなら(翌朝)(三日後・夜)のように、時間帯の括弧の中に書き込みます。

○アパート・廊下(夜)
   理沙、ドアを肩で押して閉め、階段へ走る。

○同・階段(夜)
   二段飛ばしで駆け下りる。

   × × ×

   誰もいない階段。踊り場の電球が切れている。

○同・廊下(翌朝)
   ドアが半開きのまま。

車内、外観、回想の柱

走る車の中

車や電車の中のシーンは「○走るタクシー・車内(深夜)」のように、動いていることを柱に含めます。窓の外の景色も映ることを伝えたいときは、ト書きで補います。

○走る軽トラック・車内(夜)
   ワイパーが鳴る。
   中村蓮(17)、助手席で冷めたおにぎりをかじっている。

外観

建物の中に入る前に、外から全体を見せたいときは「外観」や「全景」を使います。場所そのものが物語の情報になるときに効果的ですが、監督が判断することも多いので、すべてのシーンの前に入れる必要はありません。

○灯台・外観(明け方)

○同・灯室(明け方)
   灯台守の老人、レンズを見もせずに磨いている。

回想と夢

過去の場面は「○小学校・校庭(夕)(回想)」のように柱に(回想)を添えます。夢や想像も同じように(夢)(イメージ)と書きます。くわしくは回想シーンの書き方をご覧ください。

決定稿の柱とシーン番号

撮影用の決定稿では、柱の頭にシーン番号を付けます(「12 ○港町図書館・閲覧室(夕)」)。スタッフは番号でシーンを呼ぶので、一度振った番号はなるべく動かしません。あとからシーンを足すときは12の後ろに「12A」を入れ、削ったシーンは番号を残して「欠番」とする現場もあります。また、香盤表は柱の場所と時間帯でシーンをまとめるため、同じ場所を二通りの名前で書くと、別のロケ地として扱われてしまいます。香盤表の作り方は香盤表のガイドで説明しています。

柱の書き方の手順

  1. 新しい行の頭に○を付けます。前のシーンとのあいだは1行あけると読みやすくなります。
  2. 場所を、大きい単位から小さい単位へ「・」でつないで書きます。前に出てきた場所なら、同じ呼び方にします。
  3. 時間帯を括弧で添えます。続きのシーンなら前と同じ時間帯にし、日をまたぐなら(翌朝)などと書きます。
  4. 柱のすぐ後には、セリフではなくト書きを書きます。誰かが話す前に、読む人に場所を見せるためです。

柱書きでよくある間違い

  • 同じ場所を「台所」「吉田家の台所」と書き分けてしまう。読む人が迷い、香盤表でも別の場所に数えられます。
  • 時間帯を書き忘れる。昼なのか夜なのかで、照明も撮影の予定も変わります。
  • 柱に動きを書き込む。「○バー(夜)理沙が入ってくる」ではなく、動きはト書きに書きます。
  • 一つの部屋の中を歩くたびに柱を立てる。同じ空間の中の移動は、ト書きで十分です。
  • 場所が変わったのに柱を立てない。一番多く、一番困る間違いです。

ハリウッド形式のシーン見出し(INT./EXT.)

英語の脚本では、柱にあたるものを「シーン見出し」または「スラッグライン」と呼び、すべて大文字で書きます。INT.は屋内(interior)、EXT.は屋外(exterior)の意味で、そのあとに場所、ハイフン、時間帯(DAYやNIGHT)が続きます。

INT. フェリー乗り場・待合室 - 夜

EXT. 丘の上のぶどう畑 - 明け方

INT./EXT. 走る軽トラック - 夜

ワイパーが鳴る。中村蓮(17)、助手席で冷めたおにぎりをかじっている。
  • INT./EXT.:車内のように、中と外の両方を見せるシーン。
  • CONTINUOUS:前のシーンから時間が飛ばずに続くとき、時間帯のかわりに書きます。
  • LATER/MOMENTS LATER:同じ場所で時間が経ったとき。日本の「× × ×」に近い使い方です。
  • UPSTAIRSのような短い補助見出しで、同じ場所の中の移動を示すこともあります。

日本の柱には屋内か屋外かを書く習慣がありませんが、英語の脚本では必ず書きます。海外に出す脚本を書くときは、この違いに気をつけてください。ページ全体のルールは脚本の書き方のルールにまとめています。

Scenaloomで書く

Scenaloomでは、柱はシーンという独立した要素です。空の行でTabを押して選ぶか、ショートカットで入れられます。アジア形式では、場所、時間帯、内/外の順に入力し、柱の頭にシーン番号が付いて、そのシーンの登場人物の行が入ります。柱の最後でEnterを押すと、下にト書きの行ができます。

柱に書いた場所からは、ロケ地のページとシーンの一覧が自動で作られます。場所の呼び方をそろえておけば、一つのロケ地にそのシーンがすべてまとまります。撮影に入るときは、シーン番号を表示して固定できます。脚本を書きはじめる

よくある質問

柱書きとは何ですか?

シナリオの各シーンの頭に書く、場所と時間を示す見出しのことです。「○喫茶店・店内(夜)」のように、○、場所、時間帯の順に書きます。単に「柱」とも呼び、場所か時間が変わるたびに新しい柱を立てます。

柱の「同」はどう使いますか?

直前のシーンと同じ建物や敷地の中で場所が変わるときに、建物名のかわりに使います。「○吉田家・居間(夜)」のあとに「○同・台所(夜)」と書けば、同じ家の台所だとわかります。

柱の時間帯はどこまで細かく書けばいいですか?

ふつうは朝、昼、夕、夜、深夜くらいで十分です。物語にとって時刻が大切なときや、撮影の光が変わるときは、(早朝)(午前二時)のように細かく書いてもかまいません。

同じ場所で時間が少し経ったときは、柱を立て直しますか?

場所が同じで少しだけ時間が飛ぶなら、柱を立てずに「× × ×」を入れるのが一般的です。日付が変わったり、時間帯が大きく変わったりするときは、(翌朝)などと書いて新しい柱を立てます。

INT.とEXT.はどういう意味ですか?

英語の脚本のシーン見出しで使う略語で、INT.は屋内、EXT.は屋外を表します。「INT. KITCHEN - NIGHT」なら夜の台所の中という意味です。中と外の両方を見せるシーンにはINT./EXT.を使います。