撮影スケジュールを挟んだクリップボード、カチンコ、ガムテープ

決定稿とは、打ち合わせと直しを重ねたうえで、撮影に使うものとして確定した脚本のことです。日本の映画やドラマでは、脚本家が書いた初稿を直していき、スタッフが準備を始めるための準備稿を経て決定稿になります。決定稿のあとにさらに直しが出たときは、改訂稿や差し替えのページとして配ります。

撮影の準備が始まると、脚本は何十人ものスタッフとキャストが同時に使う資料になります。美術部は飾りを、衣装部は着替えを、助監督は香盤表とスケジュールを、それぞれの台本に書き込んでいます。だからこそ、どの版が最新なのか、どこが変わったのかが、ひと目でわからなければなりません。

初稿から決定稿までの流れ

稿どんな段階か主に読む人
初稿脚本家が最初に書き上げた稿プロデューサー、監督
第2稿、第3稿…打ち合わせの意見を受けて直した稿プロデューサー、監督
準備稿大筋が固まり、スタッフが準備を始めるための稿各部のスタッフ、キャスト
決定稿撮影に使うものとして確定した稿撮影に関わる全員
改訂稿決定稿のあとに出た直しを反映した稿撮影に関わる全員

呼び方や段階の数は、作品や会社によって少しずつ違います。準備稿を置かずに決定稿へ進む作品もあれば、決定稿のあとに「決定稿(改訂版)」として配り直す作品もあります。大切なのは、表紙に稿の名前と日付を入れて、だれが見てもどの版かわかるようにすることです。表紙の書き方は脚本の表紙のガイドで説明しています。

準備稿と決定稿の違い

準備稿は、ロケ地探しやキャスティング、美術の打ち合わせを始めるための稿です。物語の骨格は固まっていますが、セリフやシーンの細部はまだ変わる前提で読まれます。決定稿は、その準備で見えてきた事情(ロケ地の制約、予算、キャストのスケジュール)も反映して確定した稿で、撮影はこれをもとに進みます。

決定稿に入るもの

  • シーン番号:柱の頭に1、2、3…と番号を振ります。スタッフは「シーン24」と番号で話すので、決定稿以降はなるべく番号を動かしません。
  • 番号の固定:あとからシーンを足したら「12A」のように枝番を付け、削ったシーンは番号を残して「欠番」とします。こうすれば、ほかのシーンの番号がずれません。
  • 表紙の稿名と日付:決定稿、改訂稿などの名前と、配布した日付。
  • 人物表とロケ地:香盤表を作るための基礎資料として、決定稿の時点で整えておきます(香盤表のガイド)。
12 ○採石場の坂道(明け方)
   理沙の軽トラック、坂の上でエンストする。

12A ○同・崖の上(明け方)
   理沙、車を降りて谷を見下ろす。

13 欠番

14 ○港町図書館・閲覧室(朝)

この例では、新しいシーンが12Aとして入り、もとのシーン13は削られても番号だけが残っています。シーン14の撮影予定を持っているスタッフは、いつもどおりシーン14を見つけられます。柱と番号の関係は柱書きのガイドでも説明しています。

決定稿のあとの改訂の示し方

決定稿のあとに直しが出たら、全体を印刷し直すか、変わったページだけを差し替え用に配ります。どちらの場合も、どこが変わったのかがすぐわかるようにします。

  1. 表紙と変わったページに、改訂の名前と日付を入れます(改訂稿 10月14日など)。
  2. 変更した行の横(縦書きなら上、横書きなら右余白)に印を付けます。
  3. 差し替えるページは、もとのページと同じページ番号にします。あふれた分は「24A」のような枝番のページにします。
  4. どのページを差し替えたのかを一覧にして、改訂ページと一緒に配ります。

細かな直しを毎日出すと、そのたびに全員が差し替えの手間を負います。数日分の直しをまとめて一度に出すのも、現場への気配りです。

海外の改訂カラーの順番

アメリカの映画やドラマでは、決定稿にあたる最初の撮影稿を白い紙で配り、そのあとの改訂を回ごとに違う色の紙で配ります。色を見れば、手元のページがどの回の改訂なのかがすぐにわかるしくみです。順番は法律ではなく広く共有された慣例ですが、多くの現場が次の順番を使います。

  1. 白:最初に確定した撮影稿。
  2. 青:1回目の改訂。
  3. ピンク:2回目。
  4. 黄:3回目。
  5. 緑:4回目。
  6. ゴールデンロッド(濃い黄色):5回目。
  7. バフ(淡い黄褐色):6回目。
  8. サーモン:7回目。
  9. チェリー:8回目。

チェリーを過ぎたら、セカンド青、セカンドピンクのように二巡目に入る現場が多く、どの方式にするかは制作事務所が決めます。PDFでやりとりする場合も、ページのヘッダーに色の名前と日付が入るので、印刷しなくても何回目の改訂かがわかります。改訂ページでは、変更した行の右余白にアスタリスク(*)を付け、ページ番号はもとのままにします。

コンクールや持ち込みの原稿には不要

コンクールに出す脚本や、企画として持ち込む脚本は、まだ撮影の段階にありません。シーン番号の固定も、改訂の印も、稿の名前も要りません。毎回、印のないきれいな原稿を送りましょう。表紙に「第5稿」とあると、読む人は「前の4稿は何が足りなかったのか」と考えてしまいます。自分の直しの記録は、ファイル名やバージョンの履歴で手元に残しておけば十分です。応募原稿の書式は脚本の書き方のルールにまとめています。

Scenaloomで書く

Scenaloomでは、名前付きのバージョンを保存しておけば、PDFの書き出しの[改訂マーク…]から、そのバージョン以降の変更に印を付けられます。変更した行は右余白にアスタリスクが付き、各ページのヘッダーに改訂の色と日付が入ります。色は青、ピンク、黄、緑、ゴールデンロッド、バフ、サーモン、チェリー、そのあとセカンド青と続く標準の順番です。[改訂ページのみ]を選べば、差し替えるページだけを書き出せます。

撮影に入るときは、[シーン番号を固定]で番号を固定し(追加は5A、5B、削除は欠番)、[ページを固定]でページ番号も固定できます(あふれた分は12A、12B)。日本語の脚本でも、アジア形式でシーン番号を振って使えます。くわしくは脚本エディターをご覧ください。脚本を書きはじめる

よくある質問

決定稿とは何ですか?

撮影に使うものとして確定した脚本のことです。初稿から打ち合わせと直しを重ね、準備稿を経て決定稿になります。決定稿のあとに直しが出た場合は、改訂稿や差し替えのページとして配ります。

準備稿と決定稿の違いは何ですか?

準備稿は、ロケ地探しやキャスティング、美術の準備を始めるための稿で、細部はまだ変わる前提です。決定稿は、準備の過程で出た事情も反映して確定した稿で、撮影はこれをもとに進みます。

改訂稿とは何ですか?

決定稿のあとに出た直しを反映した稿のことです。全体を印刷し直す場合も、変わったページだけを差し替える場合もあります。表紙とページに改訂の名前と日付を入れ、変更した行に印を付けて、どこが変わったのかがすぐわかるようにします。

シーン番号の「12A」や「欠番」とは何ですか?

決定稿のあとにシーン番号を動かさないための書き方です。シーン12と13のあいだに足したシーンは12Aとし、削ったシーンは番号を残して欠番にします。こうすれば、香盤表やスケジュールの番号がずれません。

コンクールの原稿に「決定稿」と書いてもいいですか?

書かないほうが無難です。決定稿は撮影の段階で使う呼び方で、応募原稿には稿の名前もシーン番号の固定も必要ありません。いちばん新しい原稿を、印のないきれいな形で送りましょう。