リネンの机に置かれた脚本の原稿と鉛筆、クリップ

場面転換とは、ひとつのシーンから次のシーンへ移ることです。脚本では、新しい柱を立てるだけで「ここでカットが変わる」と伝わるため、ふつうの場面転換には何も書きません。フェードやオーバーラップのように、つなぎ方そのものに意味があるときだけ、F・OやO・Lといった記号を書き添えます。

このページでは、日本の脚本で使われる場面転換の表記と、それぞれの意味、使いどころを説明します。英語の脚本のCUT TO:やMATCH CUT TO:の書き方もあわせて紹介します。

場面転換を脚本に書く基本:柱を立てる

読む人は、柱が変われば場面が切り替わったと受け取ります。シーンの終わりのたびに「カット」と書く必要はありません。場面転換を印象づけたいなら、記号を足すより、前のシーンの最後の絵と、次のシーンの最初の絵の組み合わせで見せるほうが効果的です。

○中学校・教室(昼)
   チャイム。三十脚の椅子が一斉に床をこする。

○同・校庭(夜)
   誰もいない。ブランコがひとつだけ揺れている。

記号は何も書いていませんが、騒がしさから静けさへの切り替わりは、見落としようがありません。

日本の脚本で使う場面転換の表記

表記読み方意味と使いどころ
F・Iフェードイン暗い画面から映像が浮かび上がる。作品やシークエンスの始まり
F・Oフェードアウト映像が暗くなって消える。作品の終わりや大きな区切り
O・Lオーバーラップ前の映像が消えながら次の映像が重なって現れる。時間の経過や、ゆるやかな場所の移り変わり
× × ×(時間経過)同じ場所のまま少し時間が飛ぶ
(カットバック)カットバック二つの場所を交互に見せる。電話の場面など

記号はト書きの位置か、シーンの最後の行に書きます。O・Lは「○同・表(夕)(O・L)」のように柱に添える書き方もあります。舞台の台本では、照明を落として場面を変える「暗転」や、明るいまま転換する「明転」もよく使います。

フェードイン、フェードアウト

フェードは物語全体の額縁です。F・Iは最初の柱の前に、F・Oは最後のト書きのあとに置き、その下に「終」と書くことが多いです。途中で使うなら、第一部の終わりや、映画が見せないと決めた死の場面など、句点を打つように一度区切りたいところに限ります。

   F・I

○りんご畑(明け方)
   実に霜。木に立てかけた梯子。誰も登っていない。

   (中略)

   梯子はもうない。霜の上に、その跡だけ。

   F・O

                      終

オーバーラップ(O・L)

オーバーラップは、前の場面がゆっくり消えながら次の場面が重なって現れるつなぎ方で、英語ではディゾルブと呼びます。時間が流れたことや、気持ちがやわらかく移っていくことを示します。何度も使うと意味が薄れるので、ここぞという場面に取っておきましょう。また、日本の脚本ではセリフや音が次の場面に重なることも「声がオーバーラップして」のようにト書きで書きます。

マッチカット

マッチカットは、形、動き、音、構図がよく似た二つの映像をつなぐカットです。時間や場所が大きく飛んでも、目はそのつながりに乗ってついていきます。回るコインが回る惑星になる、閉めた車のドアの音が裁判官の木槌の音になる。説明なしに、二つの出来事を結びつけられます。

日本の脚本では決まった記号はなく、二つの映像を似た言葉で描写し、必要ならト書きに「(マッチカットで)」と添えます。似ていることが紙の上でもはっきりわかるように書くことが大切です。

○市民病院・廊下(夜)
   看護師の長谷川紗季(26)、紙コップに砂糖を入れてかき混ぜる。スプーンが回る。回る。

○遊園地(昼)(回想)(マッチカットで)
   コーヒーカップの乗り物が回る。回る。
   幼い紗季(8)が、声をあげて笑っている。

大きな時代をひとつのカットで飛び越えるような有名なマッチカットでなくてもかまいません。この小さなスプーンのように、二つの瞬間が人物の心の中でつながっていることを伝えるだけで十分に働きます。

スマッシュカット

スマッシュカットは、緊張の頂点や笑いどころで、まったく違う場面へいきなり切り替えるカットです。騒がしさから静寂へ、静けさから混乱へ、そして自信満々の宣言からその直後の失敗へ。切り替わりの速さと落差そのものが効果になります。

○村上家・台所(夜)
   村上浩二(55)、冷蔵庫を乱暴に閉める。
浩二「結婚式なんか行かんぞ。この話は終わりだ」

○ホテル・披露宴会場(夜)
   貸衣装のモーニング姿の浩二、余興で踊っている。

この場合も、記号を書かなくても落差は伝わります。読む人に切り替わりの速さを意識させたいときだけ、「(いきなり)」のようにト書きで補えば十分です。

撮影用の台本での場面転換

撮影に入ると、監督や編集の判断で、決定稿に場面転換の表記が増えることがあります。応募原稿や企画段階の脚本で、その判断を先回りして書く必要はありません。シーンの最後の絵と次のシーンの最初の絵で転換が働くように書き、つなぎ方の細部は編集に任せましょう。

場面転換でよくある間違い

  • シーンの終わりのたびに「カット」「場面変わって」と書く。
  • 柱を立てずに、ト書きの中で場所を変えてしまう。
  • O・Lを時間が飛ぶたびに使い、意味がなくなる。
  • 似ていない二つの映像に「マッチカット」と書く。
  • ズームやパンなど、カメラの指示を場面転換の記号のように書く。

ハリウッド形式の場面転換(CUT TO:など)

英語の脚本では、場面転換を大文字で右寄せにし、多くはコロンで終えます。CUT TO:(ふつうのカット)、DISSOLVE TO:(オーバーラップ)、MATCH CUT TO:、SMASH CUT TO:、JUMP CUT TO:などがあります。例外として、冒頭のFADE IN:は左寄せ、最後のFADE OUT.は後に何も続かないのでピリオドで終えます。売り込み用の脚本では日本と同じく控えめに使い、新しいシーン見出しだけでカットを示すのがふつうです。電話の場面のINTERCUTは回想とカットバックのガイドで、柱の書き方は柱書きのガイドで説明しています。

Scenaloomで書く

Scenaloomの脚本エディターには「転換」という要素があり、ハリウッド形式では文字を大文字にして右余白に寄せます。空の行でTabを押して切り替えるか、Mod+6で選べます。転換のあとでEnterを押すと、新しいシーンの柱が始まります。転換がページの先頭に来ないように自動で調整され、PDFの書き出しも同じレイアウトです。脚本を書きはじめる

よくある質問

場面転換とは何ですか?

ひとつのシーンから次のシーンへ移ることです。脚本では新しい柱を立てれば場面が変わったと伝わるので、ふつうは何も書きません。フェードやオーバーラップなど、つなぎ方に意味があるときだけ記号を書き添えます。

「カット」は脚本に書く必要がありますか?

ありません。柱が変われば、読む人はカットが変わったと受け取ります。シーンごとに「カット」と書くと行が増えるだけで、カメラを指示しているように見えてしまいます。

O・Lとはどういう意味ですか?

オーバーラップの略で、前の映像が消えながら次の映像が重なって現れるつなぎ方です。時間の経過や、ゆるやかな場所の移り変わりを示すときに使います。英語の脚本ではDISSOLVE TO:にあたります。

マッチカットとスマッシュカットの違いは何ですか?

マッチカットは、形や動き、音が似た二つの映像を結びつけるつなぎ方です。スマッシュカットは、まったく違う場面へいきなり切り替えて、落差で驚きや笑いを生むつなぎ方です。前者は似ていることで、後者は違うことで効果を出します。

F・IとF・Oはどこに書きますか?

F・Iは最初の柱の前に、F・Oは最後のト書きのあとに書くのが一般的です。途中で使うなら、大きな区切りをつけたい場面に限ります。英語の脚本では冒頭のFADE IN:を左寄せ、最後のFADE OUT.を右寄せにします。