6本のシナリオ例は、それぞれ違う技法を1つずつ見せるように書いています。下の表で学びたい技法を選び、そのあとに続く読み方の手順に沿って読み進めてください。
それぞれのシナリオ例で学べること
| 脚本 | ジャンル | 技法 | 学べるポイント |
|---|---|---|---|
| Last Call | ドラマ | アバン(コールドオープン) | 説明ではなく問いで、1ページ目から読み手を引き込む |
| The Keeper | ミステリー | 語らずに見せる | セリフではなく小道具と動作で感情を積み上げる |
| Two Calls | スリラー | カットバック | 2つの場所にまたがる1つの会話をINTERCUTで書く |
| The Interview | コメディ | セリフのサブテキスト | 口にしていることと本当の意図をずらす |
| After the Flood | ドラマ | 映像とぶつかるナレーション | 語りと映像をあえて食い違わせる |
| The Locked Room | ワンシチュエーション | 一室で高まる緊張 | 舞台を変えずに緊張を高めていく |
シナリオ例・脚本サンプルの読み方
- まずは止まらずに、映画を観る速さで一度通して読みます。1ページの脚本なら1分ほどで読み終わるはずです。
- 次に鉛筆を持って読み直します。状況が変わる瞬間すべてに印をつけてください。そこがビート(展開の節目)です。
- 書かれていないことに目を向けます。登場人物が自分の気持ちを口にする回数を数えてみてください。よい脚本ほど、その回数はわずかです。
- 脚本の下にある解説を読みます。技法を成り立たせている行を具体的に示しています。
- 書き直します。例を自分のプロジェクトとして開き、小道具、場所、セリフのどれかひとつを変えて、シーンがどう変わるかを確かめましょう。
ページのどこを見るか
- シーン見出し(日本のシナリオでいう柱):場所や時間がどのくらいの頻度で変わり、各シーンがどれだけ早く動き出すか。
- アクション(ト書き):見えるものと聞こえるものだけを、現在形の短い段落で書いているか。
- 人物の初登場:ハリウッド形式では初出の名前を大文字で書き、年齢とその人らしさが伝わる一点を添えます。日本のシナリオで人物名の後ろに(45)のように年齢を書くのと同じ役割です。
- セリフ:一つひとつがどれだけ短いか、そして口にされないことがどれだけ多くを運んでいるか。
- 余白:ページのどれくらいが空いているか。余白のあるページほど、読み手は速く読み進められます。
短編のシナリオ例と長編脚本の違い
ここにある例は1〜2ページなので、短時間で読み込め、書き直しも手軽です。ハリウッド形式の長編映画はおよそ90〜120ページ、テレビドラマの1話は30〜65ページほどになります。日本の200字詰め原稿用紙(ペラ)なら1枚がおよそ30秒前後の尺の目安です。ただ、長さは違っても組み立てる部品は同じです。展開が転じるシーン、言葉の裏に多くを隠したセリフ、カメラで撮れるト書き。1ページでできる技法は、100ページの脚本でも使えます。脚本全体の長さと形は脚本フォーマットのガイドと短編映画の脚本の書き方を参照してください。
長編の脚本を読める場所
実際に映像化された脚本の多くは、正規の形で公開されています。海外では映画会社が賞レースの時期に脚本を公開し、出版社がシナリオ本を刊行し、ロサンゼルスの全米脚本家組合財団(Writers Guild Foundation)の図書館のように、館内で閲覧できる資料室もあります。日本でも、月刊誌『シナリオ』や『ドラマ』に掲載された脚本、書籍として出版されたシナリオ集、日本脚本アーカイブズのような保存活動を通じて、プロの脚本に触れられます。非公式に出回っているものは完成した映像からの書き起こしであることが多く、脚本家が実際に書いた原稿とは別物なので、こうした正規の資料から読むようにしましょう。