コルクボードに3列で留めたカード。一部が赤い糸でつながっている

物語の構成とは、物語の出来事をどの順番で並べ、どこで流れを変えるかという設計のことです。観客がいつ問題に出会い、どこで賭け金が上がり、主人公がどこでどん底に落ち、結末がそれまでの積み重ねにどう応えるのか。それを決めるのが構成です。

これから紹介するストーリー構成の型は、重なり合う部分が多く、ほとんどが同じ緊張の高まりと解放を、違う場所で区切っているにすぎません。それでも、作品に合う物差しを最初に選んでおくと、書き直しの手間が大きく減ります。

ストーリーと構成の違い

ストーリー(筋)は「何が起きるか」、構成は「起きたことをどう並べ、何に重みを置くか」です。同じ筋でも、並べ方が変われば別の作品になります。

構成になっているかどうかは、因果で確かめられます。あらすじの出来事を「そして」でしかつなげないなら、それはただの出来事の一覧です。「ところが」と「だから」でつなげるなら、構成になっています。一つひとつの曲がり角が、前の出来事から生まれ、次の出来事を引き起こしているからです。

物語の構成のパターン一覧

脚本を書く人がよく出会う構成の型です。割合は上映時間に対するおおよその目安です。

構成の型区切り方向いている作品
起承転結起・承・転・結の4部。対立を必須としない短編、静かな作品、1話完結のドラマ
序破急ゆっくり始まり、崩れ、急速に終わる3段テンポに緩急をつけたい作品
三幕構成設定(約25%)、対立(約50%)、解決(約25%)長編映画の基本
五幕構成(フライタークのピラミッド)中央に山場を置き、後半は転落悲劇、CMで区切るドラマ
ヒーローズ・ジャーニー日常から未知の世界へ旅立ち、帰還する12段階冒険、成長物語
ビートシート三幕を15ほどの節目に細分商業的な長編のテンポ管理
シークエンス構成長編を8つのまとまりに分ける中盤がたるみがちな脚本
時系列を入れ替える構成出来事を時間どおりに並べない謎、記憶、多視点の物語

起承転結

起承転結は、漢詩の絶句の組み立てに由来する四部構成で、日本ではもっとも身近な物語の型です。「起」で状況を示し、「承」でそれを受けて広げ、「転」で一見関係のない出来事や視点の変化を持ち込み、「結」でそれまでがどうつながるのかを明かします。対立や悪役がいなくても成り立つのが大きな特徴です。

静かな作品、日常を描く作品、短編や1話完結のエピソードを、戦いではなく「気づき」の瞬間で終えたいときに向いています。くわしくは起承転結のガイドをご覧ください。

序破急

序破急は、雅楽や能楽で使われてきた、展開の緩急を表す考え方です。「序」でゆっくりと始め、「破」で流れを崩して展開させ、「急」で一気に結末へ向かいます。場面の数や割合を決める型というより、全体にも、一つのシーンにも当てはまるテンポの物差しとして使うと役に立ちます。三幕構成と重ね合わせて考える書き手も多くいます。

三幕構成

三幕構成は、物語を設定、対立、解決の三つに分け、そのあいだに主人公を新しい状況へ押し出す二つの転換点を置く型です。脚本の教室でもっとも広く教えられていて、プロデューサーと話すときの共通語にもなっています。第一幕は、主人公の日常を揺るがすきっかけとなる出来事で動き出すのが一般的です。

主人公が一人で目的がはっきりした長編を書くとき、また、プロデューサーや読み手と共通の言葉で話したいときに向いています。幕の区切りや中間点、枚数の目安は三幕構成のガイドで説明しています。

五幕構成とフライタークのピラミッド

フライタークのピラミッドは、ドイツの作家グスタフ・フライタークが1863年に示した五部構成のモデルで、発端、上昇、山場、下降、破局からなります。山場を真ん中に置き、その後に長い転落が続くのが特徴です。主人公の頂点がそのまま破滅の始まりになる悲劇や、CMでいくつにも区切られる1時間ドラマに向いています。フライタークのピラミッドのガイドもあわせてどうぞ。

ヒーローズ・ジャーニーとビートシート

ヒーローズ・ジャーニーは、神話学者ジョーゼフ・キャンベルの『千の顔をもつ英雄』(1949年)をもとに、クリストファー・ボグラーが脚本家向けに12の段階にまとめた型です。日常の世界、冒険への誘い、拒絶、師との出会い、境界を越える、試練、接近、最大の試練、報酬、帰路、復活、帰還と進みます。旅立って帰ってくる冒険や成長の物語に合います。

ビートシートは、ブレイク・スナイダーの『SAVE THE CATの法則』で広く知られるようになった、三幕を15ほどの節目に細かく分けた型です。節目ごとに目安のページが決まっているので、商業的な長編のテンポを整えるのにいちばん実用的です。日本の脚本の現場で使われる「箱書き」と組み合わせると、シーン単位の設計まで落とし込めます。どちらも箱書きとビートシートのガイドで比べています。

シークエンス構成

シークエンス構成は、長編を12〜15ページほどのまとまり8つに分け、それぞれを小さな目的と結末を持つ短編のように組む方法です。第一幕に2つ、第二幕に4つ、第三幕に2つを置きます。映画教育者のフランク・ダニエルと、ポール・グリーノの著書で知られるようになりました。脚本の長い中盤がどうしてもたるむときに試す価値があります。第二幕を4つの小さな物語と考えれば、一本の長い坂道ではなく、ギアを変えられる場所が4つできます。

時系列を入れ替える構成

時系列を入れ替える構成は、回想、並行する時間軸、逆順の語りなどで、出来事を起きた順番どおりに見せない作り方です。同じ出来事を複数の証言で語る『羅生門』や、同じ数日間を人物ごとの視点で描き直す『桐島、部活やめるってよ』、前半と後半で見え方がひっくり返る『カメラを止めるな!』などがよく語られる例です。

出来事の順番より、明かす順番が大事な物語に向いています。それでも、土台となる構成は必要です。時計ではなく観客の理解が山場に向かって高まっていくように、節目を並べ替えるだけです。回想の書き方は回想シーンの書き方で説明しています。

物語の構成の選び方

作品に合う構成とは、物語のいちばん大きな曲がり角が自然に来る場所と、対立がどれだけ物語を動かしているかに合った構成です。型を選ぶ前に、次のことを自分に聞いてみてください。

  • 山場はどこにあるか。決定的な出来事が終盤なら三幕構成かビートシート。真ん中にあって、後半がその代償なら五幕構成。
  • 敵や対立は必要か。対比や視点の変化、気づきで引っぱる物語なら、起承転結を試します。
  • どれくらい早く動き出すべきか。最初のページから観客を危機に置きたいなら、事件を冒頭に置き、背景はあとから少しずつ明かします。
  • 長さはどれくらいか。長編なら三幕構成、シークエンス、ビートシート。10分の短編や2分の縦型ショートドラマなら、4つの部分か、ひとつのどんでん返しで足りることが多いです。
  • 時間そのものが意味を持つか。持つなら、まず時系列どおりにプロットを組み、そのあとで語る順番を決めます。

全体の枠は三幕か五幕、その中の細部はシークエンスやビートで、と二つの型を組み合わせる書き手も多くいます。プロットの組み方はプロットの書き方でも説明しています。

例:ひとつの題材を三つの構成で組む

題材はシンプルにします。離島の灯台守が、岩場に打ち上げられた見知らぬ男を見つける。三つの型で組むと、次のように変わります。

  • 三幕構成:灯台守が男を海上保安庁から匿うところで第一幕が終わります。中間点で、男が逃げているのは、かつて灯台守が隠すのを手伝った事件だとわかります。第三幕は嵐の夜、灯台守はだれを救うかを選ばなければなりません。
  • 五幕構成:山場は真ん中、灯台守が男をかばうために嘘をつく瞬間です。後半は、島の人々が背を向けていくなかで、その嘘の代償をゆっくり払っていく物語になります。
  • 起承転結:起で灯台守の日課を見せ、承で回復した男がその日課を覚えていく様子を描きます。転で、本土から毎晩灯台を眺めている子どもに場面が切り替わり、結で、灯台の光がその子への合図だったこと、それがこれからは二人で守られていくことが明かされます。

同じ人物、同じ島でも、三つの別々の作品になります。先に構成を選ぶと、本当に書くべきシーンが見えてきます。

Scenaloomで構成を組む

Scenaloomのビートでは、[構成から始める]から三幕構成、15ビートシート、ヒーローズ・ジャーニーを選べます。それぞれの節目は、目標の長さ(初期設定は110ページ)に対するいつもの割合の位置に置かれます。ストーリーマップには目標の長さが示され、超えたページは赤で表示されます。アウトラインにはエピソードごとの計画を書き、シーンボードではカードを動かして、箱書きのように並び順を試せます。くわしくはアウトラインとビートをご覧ください。プロジェクトを始める

よくある質問

物語の構成にはどんな種類がありますか?

代表的なのは、起承転結、序破急、三幕構成、五幕構成(フライタークのピラミッド)、ヒーローズ・ジャーニー、ビートシート、シークエンス構成、時系列を入れ替える構成です。多くは同じ緊張の高まりと解放を違う場所で区切ったもので、全体の枠と細部で二つを組み合わせることもよくあります。

起承転結と三幕構成はどう違いますか?

三幕構成は、主人公が目的に向かって障害とぶつかる対立を軸に、設定、対立、解決の三つに分けます。起承転結は対立を必須とせず、「転」で持ち込んだ別の要素が「結」でつながる、対比と気づきで引っぱる型です。

脚本にはどの構成がいちばん向いていますか?

長編映画の脚本なら、三幕構成から始めるのが無難です。単純で融通がきき、脚本を読むだれもが理解しているからです。悲劇なら五幕構成、静かな作品や短編なら起承転結、と物語に合わせて切り替えたり組み合わせたりしましょう。

物語は必ず構成の型に沿うべきですか?

型に沿う必要はありませんが、自分なりの構成は必要です。型は観客がすでに反応するパターンを言葉にしたものなので、診断の道具としていちばん役立ちます。初稿がもたつく、結末が弱いと感じたら、型と照らし合わせると、欠けている曲がり角が見つかります。

ストーリーとプロットと構成の違いは何ですか?

ストーリーは物語で起きる出来事そのもの、プロットはそれを因果でつないだ筋、構成はその筋をどう並べ、どこで流れを変えるかの設計です。同じ筋でも、構成が違えばまったく別の作品になります。