
プロットとは、物語の出来事を起きる順に並べ、それぞれが「なぜ起きるのか」という因果でつないだ設計図です。プロットの書き方は、一行の要約、主人公の目的と障害、結末、大きな転換点、場面の一覧の順に決めていくと、途中で迷わずに組み立てられます。
脚本でも小説でも漫画でも、基本の作り方は同じです。このページでは手順を例で示し、日本の脚本づくりで使われる箱書き、三幕構成と起承転結での組み方、コピーして使えるプロット テンプレート、応募に使うあらすじの書き方まで説明します。
プロットとは?あらすじとの違い
作家のE・M・フォースターは『小説の諸相』で、「王が死に、それから王妃が死んだ」は出来事を並べただけのストーリーで、「王が死に、悲しみのあまり王妃が死んだ」となってはじめてプロットになる、という趣旨の例を挙げています。プロットの核は「だから」「ところが」でつながる因果です。
| 項目 | プロット | あらすじ |
|---|---|---|
| 読む人 | 自分、共作者、プロデューサー、担当編集者 | 審査員、編集者、読者 |
| 中身 | 場面の順番、因果、未定の部分 | 物語の始まりから結末まで |
| 書き方 | 箇条書きやメモでよい | つながった文章で書く |
| 結末 | 必ず決めておく | 応募用なら必ず書く |
| 長さ | 自由 | 募集の規定に従う |
テレビドラマの現場では、脚本の前にプロデューサーへ提出する「プロット」が、数ページの文章であらすじに近い形をとることもあります。依頼されたときは、何に使うプロットなのかを確認しましょう。
プロットの書き方(6つの手順)
- 一行で物語を言う。「誰が、何を求めて、何に阻まれ、どうなるか」を一文にします。
- 主人公の目的と障害を決める。目的は目に見える形にし、障害を主人公の弱点と結びつけると物語が深くなります。
- 結末を先に決める。主人公は目的を果たすのか、失うのか、別のものを手に入れるのか。結末が決まると、途中に置くべき出来事が見えてきます。
- 大きな転換点を置く。物語が動くきっかけ、後戻りできない決断、中盤の転換、どん底、クライマックスの5つが基本です。
- 転換点の間を場面で埋める。1行に1場面、「どこで、誰が、何をして、何が変わったか」を書きます。
- 通して読み、因果を確かめる。場面どうしが「そして」でしかつながらない箇所は、「だから」か「ところが」でつながるように直します。
プロットの書き方の例
架空の短編「しまい湯」のプロットです。一行の要約と人物の骨組みを先に書き、場面は1行ずつ、転換点には括弧で役割を添えています。
しまい湯(短編・約3万字/映画なら約30分) 一行で: 祖父の銭湯を閉めに帰省した会社員が、 最後の一週間で店の終わらせ方を選び直す。 主人公:真帆(32)、東京の会社員 目的:一週間で店を片付けて東京に戻る 弱点:人に頼らず一人で済ませようとする 結末:店は閉めるが、最後の湯を沸かす 1 祖父が倒れ、真帆が廃業の手続きを任される (きっかけ) 2 閉店の貼り紙を出し、片付けを始める 3 常連に頼まれ、夜だけ営業を続けると決める (決断) 4 祖父の帳面に、常連ごとの好みの湯温を見つける 5 帳面の最後に、幼い自分の名前と「42度」 (中盤の転換) 6 最終日の前夜、ボイラーが壊れる(どん底) 7 常連に頭を下げ、古い薪釜で最後の湯を沸かす (クライマックス) 8 閉店。暖簾と帳面を持ち帰り、病室の祖父に 湯の温度を伝える(結末)
各行の終わりで、状況が変わっていることを確かめます。変化のない行があれば、その場面は削るか、前後とまとめる候補です。弱点の「人に頼らない」は、場面7で常連に頭を下げる行動として回収されています。弱点と結末を結びつけると、出来事の並びが人物の変化の物語になります。
箱書きの作り方
箱書きとは、日本の脚本づくりで使われる方法で、シーンを一つずつ箱(枠)に書き出して並べ、構成を確かめるものです。プロットの1行を、柱・登場人物・出来事・変化に分けて書くイメージです。カードや付箋に書いて机に並べれば、場面の入れ替えも簡単にできます。
┌─────────────────── │ 4 松の湯・釜場(夜) │ 人物:真帆、常連の辰夫 │ 出来事:釜の番を代わった真帆が、 │ 祖父の帳面を見つける。辰夫の欄に「41度」 │ 変化:店を「片付ける物」と見ていた真帆が、 │ 常連一人ひとりの顔を知りはじめる └───────────────────
- 1つの箱に1シーン。場所か時間が変わったら、新しい箱にします。
- 「変化」の欄が書けない箱は、削るか、前後の箱とまとめる候補です。
- 箱を幕ごと、話数ごとに分けて並べると、どこが長すぎるか、中盤が薄いかがひと目で分かります。
- 箱書きが固まってから脚本の初稿に入ると、書いている途中で迷子になりにくくなります。
プロット テンプレート
脚本(映画)のプロット テンプレート
タイトル(仮): 一行で(ログライン): 想定尺: 主人公: 目的: 弱点: 相手役・敵対者: 結末: 【第一幕】(全体の約25%) 1 日常と主人公の欲しいもの 2 きっかけとなる出来事 3 後戻りできない決断 【第二幕】(約50%) 4 新しい状況での試行錯誤 5 中盤の転換 6 障害が強まる 7 どん底 【第三幕】(約25%) 8 最後の決断 9 クライマックス 10 新しい日常
シーンごとに柱・内容・変化・登場人物・ページ数を並べた表で管理したい場合は、40行のCSVテンプレートを使えます。列名は英語ですが、日本語に書き換えて使ってかまいません。
プロット テンプレート(CSV)幕ごとに40のシーン行。ExcelやGoogleスプレッドシートで開けます。列名は英語です
小説のプロット テンプレート
タイトル(仮): 一行で: 視点・人称: 目標の文字数: 主人公: 目的: 本当の欲求: 弱点: 結末: 第1章:(何が起き、章の終わりに何が変わるか) 第2章: 第3章: …… 最終章:
小説では、章ごとに「その章で何が変わるか」を一行書くだけでも、途中で手が止まりにくくなります。書き方の全体は小説の書き方で説明しています。
連続ドラマ1話分のプロット
連続ドラマでは、1話の中の流れと、シリーズ全体の流れの両方を考えます。1話分のプロットには、その話の中で始まって終わる出来事(A筋)、並行して進む小さな出来事(B筋)、次の話へ引っぱる引き(ラストの一場面)を書いておきます。最初の1話の書き方は連続ドラマ第1話の書き方をご覧ください。
三幕構成でプロットを組む
三幕構成とは、物語を設定・対立・解決の3つの幕に分け、おおよそ1:2:1の長さで配分する型です。ハリウッド映画の脚本術として広まり、今では小説やドラマのプロット作りにも広く使われています。
| 幕 | 割合の目安 | 中身 | 「しまい湯」では |
|---|---|---|---|
| 第一幕:設定 | 約25% | 主人公と日常、きっかけ、後戻りできない決断 | 場面1〜3 |
| 第二幕:対立 | 約50% | 障害の連続、中盤の転換、どん底 | 場面4〜6 |
| 第三幕:解決 | 約25% | クライマックスと、その後の新しい日常 | 場面7〜8 |
第二幕は全体の半分を占めるため、いちばん中だるみしやすい幕です。中盤の転換で主人公の目的や状況をはっきり変えると、後半に勢いが出ます。詳しくは三幕構成とビートシートも参考にしてください。
起承転結でプロットを組む
起承転結は、導入(起)、展開(承)、転換(転)、結末(結)の4つで物語を組む型です。もとは漢詩の構成法とされ、日本では作文や4コマ漫画でなじみがあります。
- 起:人物と舞台、いつもの状況を見せる。「しまい湯」なら場面1〜2。
- 承:状況を一歩進め、読者を物語に慣れさせる。場面3〜4。
- 転:思いがけない角度から新しい要素が入る。場面5〜6。
- 結:転を受けて全体がつながり、それまでの意味が変わる。場面7〜8。
三幕構成が対立と解決で引っぱるのに対し、起承転結は「転」の意外さで引っぱります。敵役のいない日常の話や短編、4コマ漫画やショート動画のように短い作品に向いています。作例は起承転結のページで紹介しています。
あらすじの書き方
あらすじは、物語の始まりから結末までを読み手に伝える文章です。シナリオコンクールや新人賞では、字数を指定してあらすじの提出を求めることが多く、審査員は本文の前にあらすじで物語の骨組みを確かめます。
- 結末まで必ず書く。「果たして二人の運命は」のような予告編風の書き方は、応募用では逆効果です。
- プロットの転換点を順番どおりに文章にする。すべての場面を書く必要はありません。
- 名前を出す人物は3〜4人までにし、ほかは「同僚」「常連客」のように役割で書く。
- 規定の字数に合わせる。長めに書いてから削るほうが、短い文を膨らませるより楽です。
プロットを作るか、書きながら考えるか
プロットを先に作る書き手もいれば、書きながら物語を見つける書き手もいます。プロットがあると、結末に向かって迷わず書け、改稿の量も減ります。一方で、書く前にすべてを決めると、書く楽しみが減ると感じる人もいます。おすすめは、結末と大きな転換点だけを決めて書きはじめ、書きながら箱書きを更新していく方法です。脚本では、尺やページ数の制約があるので、少なくとも箱書きまでは作っておくと安心です。
プロット作りでよくある失敗
- 出来事を並べただけで因果がない。場面どうしが「そして」でしかつながっていない。
- 結末を決めないまま書きはじめ、中盤で行き詰まる。
- 主人公が受け身で、自分では何も選ばない。転換点は主人公の決断で起こすのが基本です。
- 中盤が同じことの繰り返しになる。障害が大きくなるだけでなく、主人公のやり方も変わる必要があります。
- 細部まで書き込みすぎる。台詞や描写は本文で考えれば十分です。
Scenaloomでプロットを組む
Scenaloomでは、脚本のエピソードごとにリッチテキストのアウトラインを書けます。ビートボードは三幕構成、15ビートシート、ヒーローズ・ジャーニーから始められ、各ビートが目標の長さに対するいつもの位置に置かれます。シーンボードでは柱ごとのカードを並べ替えて、箱書きのように流れを確かめられ、連続ドラマならエピソードボードで話数ごとの構成を管理できます。
小説プロジェクトには、全体のアウトライン、章ボード、章ごとのアウトラインがあります。ScenaloomのAIに章のアウトラインの案を出してもらうこともでき、案は提案として表示されるので、使うか、自分のアウトラインの下に加えるかを選べます。詳しくは物語の構成をご覧ください。無料でプロットを作りはじめる
よくある質問
プロットとは何ですか?
プロットとは、物語の出来事を起きる順に並べ、「だから」「ところが」という因果でつないだ設計図です。書き手が物語を組み立てるための作業用の資料で、結末まで決めておくのが基本です。
プロットとあらすじの違いは何ですか?
プロットは書き手のための設計図で、箇条書きやメモでかまいません。あらすじは読み手に物語を伝えるための要約文で、つながった文章で結末まで書きます。順番としては、プロットで流れを固めて本文を書き、そのあとで応募用のあらすじにまとめ直すのが一般的です。
箱書きとは何ですか?
箱書きは、シーンを一つずつ箱(枠)に書き出し、柱、登場人物、出来事、変化をまとめて並べる、日本の脚本づくりの方法です。場面の順番や長さのバランスを、脚本を書く前に確かめられます。
プロットはどのくらいの長さで書けばいいですか?
決まった長さはありませんが、短編ならA4で1〜2枚、長編なら章やシーンごとに数行ずつが目安です。細かく書きすぎると、それだけで満足して本文が進まなくなることがあります。
小説のプロットは章ごとに作るべきですか?
章ごとに「その章で何が変わるか」を一行ずつ書いておくと、長編でも迷いにくくなります。ただし細部まで決める必要はなく、書きながら更新していけば十分です。
プロットなしで脚本を書いてもいいですか?
書けますが、脚本は尺やページ数の制約が強いので、少なくとも結末と大きな転換点、できれば箱書きまで作っておくと、改稿の量が大きく減ります。