
起承転結とは、話を「起(始まり)」「承(展開)」「転(転換)」「結(結び)」の4つの部分で組み立てる構成法です。簡単にいうと、起で状況を示し、承でそれを深め、転でがらりと別の角度を持ち込み、結でそれらを1つにまとめて締めくくります。対立や勝ち負けがなくても、「転」の意外さと「結」の納得で読み手を引きつけられるのが特徴です。
もとは中国の漢詩、とくに4行の絶句の組み立て方(起句・承句・転句・結句)から来た言葉で、中国語では「起承転合」、韓国語では「起承転結(기승전결)」と呼ばれ、東アジアで広く使われています。日本では作文の授業で習うことが多く、4コマ漫画の基本の型としてもおなじみです。脚本家にとっては、悪役のいない物語を組み立てるときの、三幕構成とは別の選択肢になります。
起承転結の4つの部分と役割
4つの部分にはそれぞれはっきりした役割があり、短い作品では4つがほぼ同じ長さになることがよくあります。
| 部分 | 役割 | 物語で書くこと |
|---|---|---|
| 起 | 導入 | 人物、場所、状況を示す。まだ何も問題は起きず、観客は「いつもの様子」を知る |
| 承 | 展開 | 起で示したものを深める。同じ世界をもう少し見せ、観客をなじませる。まだ転換はない |
| 転 | 転換 | 一見関係のない新しい要素を持ち込む。別の場所、別の人物、思いがけない視点。全体の心臓部 |
| 結 | 結び | 転と前半の2つを結びつけ、新しい全体にする。結末がそれまでのすべての見え方を変える |
起承転結の例
古くから知られる例:「糸屋の娘」
起承転結の説明でよく引かれるのが、江戸時代の儒学者・頼山陽の作と伝えられる次の俗謡です。
京の三条の糸屋の娘 姉は十六妹は十四 諸国大名は弓矢で殺す 糸屋の娘は目で殺す
1行目で人物を示し(起)、2行目でその姉妹の年を添えて深め(承)、3行目で突然、諸国の大名と戦の話に飛びます(転)。そして4行目で「糸屋の娘は目で殺す」と、まったく関係なさそうな2つを一気に結びつけます(結)。転で「なぜ急に大名の話?」と思わせ、結で「なるほど」と膝を打たせる、これが起承転結の基本の動きです。
4コマ漫画の例
同じ形で作った、オリジナルの4コマです。
- 起:おじいさんが毎朝、公園の同じベンチでハトにパンをやっている。
- 承:雨の日も、傘をパンの上に差しかけてやって来る。
- 転:町の反対側で、入院中の女の子が病室の窓にハトの絵を描いている。
- 結:おじいさんのスマホに孫から写真つきのメッセージ。「おじいちゃん、今日は何羽?」おじいさん、数えはじめる。
3コマ目だけを見ると、話がそれたように感じます。けれど4コマ目で、毎朝のハトが孫との約束だったと分かり、1コマ目と2コマ目の見え方まで変わります。
映画で見る起承転結
対決よりも静かな観察と視点の変化で進むことから、起承転結に近いと語られる映画もあります。よく挙げられるのは『となりのトトロ』(1988年)です。姉妹が田舎の家に引っ越し、森を探検し、森の主に出会います。物語の緊張は悪役からではなく、入院している母親の病気から生まれます。小津安二郎の『東京物語』(1953年)のような家族劇も、世代のあいだの小さなずれが、対決ではなく理解で解けていく作品として、よく引き合いに出されます。
ただし、これは見る側の読み方で、作り手がそう名付けたわけではありません。長編映画で4つの部分を厳密に守っている作品は少なく、この型がいちばんはっきり表れるのは短い作品です。
対立がなくても物語になるしくみ
起承転結が中心の対立なしで成り立つのは、その原動力が「並べること」だからです。似ていない2つがどうつながるのか、という観客の好奇心が、西洋のドラマで敵味方の争いが担う役割を果たします。緊張は「誰が勝つのか」ではなく、「なぜこれを見せられているのか」という問いから生まれます。
対立を入れてはいけない、という意味ではありません。この型で作られた物語にも、口げんか、別れ、危険はよく出てきます。違いは、構成がそれに頼っていないことです。山場は「気づき」であり、主人公はそこにたどり着くために何かを倒す必要がありません。三幕構成では、結末は物語のきっかけが立てた問いに答えますが、起承転結では、ほんの少し前に転が立てた問いに答えます。
日本の脚本講座でのもう1つの使い方
日本では、起承転結がもっとゆるやかな意味で使われることもよくあります。起を発端、承を事件の展開、転を山場(クライマックス)、結を結末と考え、対立のある物語のプロットを4つに分けて整理する使い方です。この場合の「転」は視点の切り替えというより、物語がいちばん大きく動く場面を指します。どちらの意味で話しているのかを意識しておくと、打ち合わせでの食い違いを防げます。
短編映画やショートドラマで起承転結を使う方法
起承転結は、短編映画、1話完結のエピソード、縦型のショートドラマによく合います。4つの流れが数分に収まりやすく、長い積み上げがなくても転が強い最後の一押しになるからです。実際の手順は次のとおりです。
- 結から考える:最後の瞬間に観客に何を分かってほしいかを決め、それが効く転へとさかのぼります。
- 起と承は具体的に:決まった習慣、場所、くり返されるしぐさ。前半が具体的なほど、転の落差がくっきりします。
- 転では場面を切り替える:場所、時間、視点を変えるのが、画面で転を伝えるいちばん分かりやすい方法です。
- 結は絵で締める:セリフで説明するのではなく、小道具、まなざし、新しい光で見直されたくり返しの動作など、目に見えるもので結びます。
- 尺を配分する:10分の短編なら1パート2〜3分が出発点の目安です。90秒のエピソードなら、1パートが1カットということもあります。
次は、物語が思いがけない場所へ切り替わる「転」の瞬間を、日本の書式で書いた例です。
○うどん屋「さぬき庵」・店内(夜) 閉店間際。佐野文子(72)、カウンターに丼を2つ並べる。 座っているのは文子だけ。 文子、ゆっくりとすする。隣の丼から湯気が立ちのぼる。 ○成田空港・到着ロビー(夜) 手描きの地図を握った青年・悠真(24)、スマホで住所を確かめる。 悠真、走り出す。
Scenaloomのアジア形式は、日本語・中国語・韓国語の脚本に合わせたレイアウトなので、4つのパートを母語のまま原稿に起こせます。短いエピソードのテンポについてはショートドラマのガイドで説明しています。
起承転結と三幕構成の違い
| 比べる点 | 三幕構成 | 起承転結 |
|---|---|---|
| 原動力 | 対立と目標 | 対比と気づき |
| 転換点 | 障害とクライマックス | 3つ目の「転」 |
| 主人公 | 変化する能動的な主人公が必要 | 見ている人、場所、複数の人物でもよい |
| 向いている長さ | 長編映画 | 短編、エピソード、詩、4コマ漫画 |
2つは組み合わせることもできます。長編全体は三幕構成で組み、1つのシークエンスの中だけ起承転結を使う。あるいは連続ドラマで、各話は4つのパートで語り、シーズン全体ではふつうの対立を積み上げる。ほかの型との比較は、物語の構成のガイドにまとめています。
作文やビジネス文書での起承転結
起承転結は作文や小論文の型としても教えられますが、報告書やプレゼンのように結論を早く伝えたい文書には向かないといわれます。転で話をそらすと、読み手が要点を見失うからです。ビジネスでは結論を先に書く型を使い、起承転結は、エッセイやスピーチ、物語のように「最後に腑に落ちる」ことが大切な場面で使うのがおすすめです。
Scenaloomで起承転結を組む
Scenaloomのビートボードは「三幕構成」「15ビートシート」「ヒーローズ・ジャーニー」から始められ、各ビートは目標の長さ(初期設定は110ページ)に対するふつうの割合の位置に置かれます。起承転結のテンプレートはないので、アウトラインに「起・承・転・結」の4つの見出しを立て、シーンボードでその下にシーンを並べるのがいちばん簡単です。短編なら、ストーリーマップで目標の長さを短く設定できます。日本語の脚本では、プロジェクトをアジア形式に切り替えてください。くわしくはアウトラインとビートを読むか、プロジェクトを始めてみてください。
よくある質問
起承転結とは簡単にいうとどういう意味ですか?
話を4つに分けて組み立てる方法です。起で状況を示し、承でそれを深め、転で別の角度や新しい要素を持ち込み、結で全部をまとめて締めます。もとは漢詩の絶句の組み立て方から来た言葉で、作文、4コマ漫画、物語づくりなどに広く使われています。
起承転結の「転」では何を書けばいいですか?
それまでと違う場所、人物、時間、視点など、一見関係のない新しい要素を持ち込みます。大事なのは、結でそれが前半とつながることです。ただし日本の脚本講座では、転を物語の山場(クライマックス)として使うこともあり、その場合は物語がいちばん大きく動く場面を書きます。
起承転結の物語には対立が必要ですか?
必要ではありませんが、入れてはいけないわけでもありません。起承転結を動かすのは対比で、転が「これは前とどうつながるのか」という問いを生み、結がそれに答えます。口げんかや危険が出てきても、争いではなく気づきで終わるのが起承転結らしい形です。
起承転結は4幕構成のことですか?
4幕構成と説明されることもありますが、各部分は舞台の「幕」というより流れの区切りです。西洋の4幕構成の多くは、対立を軸にした第二幕を2つに割ったものですが、起承転結は3つ目で新しい要素を持ち込み、4つ目でそれを前の2つと結びつけます。
長編映画を起承転結で書けますか?
書けますが、短い作品のほうが保ちやすい型です。多くの書き手は、1つのシークエンス、1話、短編に起承転結を使い、長編全体は三幕構成や五幕構成で組みます。対比だけで長編を引っぱるには、かなり強い映像と人物が必要です。
起承転結と序破急の違いは何ですか?
起承転結は話の中身を4つに配置する型で、序破急は能や雅楽から生まれた、ゆっくり始まり、変化し、速く終わるというテンポの考え方です。起承転結で全体の組み立てを決め、序破急でシーンや場面の運びのリズムを整える、という使い分けができます。