コルクボードに3列で留めたカード。一部が赤い糸でつながっている

三幕構成とは、物語を「設定(第一幕)」「対立(第二幕)」「解決(第三幕)」の3つに分け、そのあいだを主人公を新しい状況へ押し出す2つの転換点でつなぐ構成法です。長編映画では、各幕の長さがおよそ1:2:1(25%、50%、25%)になり、第二幕のちょうど真ん中にミッドポイントと呼ばれる折り返し点が置かれます。

始まり・中盤・終わりという考え方自体はアリストテレスの『詩学』までさかのぼりますが、いま脚本家が使っている形を広めたのは、シド・フィールドの著書『Screenplay』(1979年)です。幕と幕のあいだの転換点を「プロットポイント」と名付けたのもこの本でした。日本でも映画やドラマの企画会議で「第一幕の終わりはどこ?」と聞かれたら、それはこの三幕構成の考え方で話しています。

三幕構成を図で見る

ハリウッド形式の脚本では1ページがおよそ1分といわれ、長編は110ページ前後が標準です。110ページの脚本に三幕構成を当てはめると、次のようになります。ページ数は締め切りではなく、道しるべと考えてください。

110ページの脚本における三幕構成の図。第一幕は27ページまで、第二幕は82ページ前後まで、第三幕は最後まで。上昇する緊張の線の上に、きっかけとなる出来事、ミッドポイント、どん底、クライマックスが示されている
110ページの長編における三幕と、以下で説明する転換点の位置。
  1. 1〜10ページ:オープニングと設定。主人公が誰で、何を求めていて、何が欠けているのかを見せます。
  2. 10〜15ページあたり:主人公の日常をくずす、きっかけとなる出来事が起きます。
  3. 27ページあたり(25%):第一幕の終わり。主人公がある行動を選び、第二幕に入ります。
  4. 55ページあたり(50%):ミッドポイント。逆転、真相の発覚、見せかけの勝利などで賭け金が上がります。
  5. 75〜82ページあたり:どん底と第二幕の終わり。すべてを失ったように見えたところで、新しい決断が第三幕を動かします。
  6. 100〜108ページあたり:クライマックス。主人公が中心の対立に正面から向き合います。
  7. 最後の数ページ:解決。何が変わったのか、新しい日常を見せます。

第一幕:設定

第一幕では、主人公とその世界、物語を動かす問題を示し、主人公が簡単には引き返せない目標を引き受けたところで幕を閉じます。この幕の仕事は、何かが起きる前に観客に主人公を好きになってもらい、そのうえで何かを起こすことです。

多くの第一幕には、3つの要素があります。何かが欠けていることをにおわせる「いつもの日常」、それをくずすきっかけとなる出来事、そして迷いや準備の時間を経て、主人公が選択をする場面です。この選択が大切です。主人公の身にただ降りかかるだけの幕切れより、主人公が自分で一歩を踏み出す幕切れのほうが、ずっと強くなります。

第二幕:対立

第二幕はいちばん長い幕で、主人公は次々に立ちはだかる障害に向かって目標を追い、勝つために変わることを迫られます。全体のおよそ半分、110ページの脚本なら55ページほどを占めるため、多くの初稿がここで失速します。

第二幕は、たいてい3つの流れでできています。まず主人公は新しい状況に古いやり方のまま挑み、うまくいったりいかなかったりします。次にミッドポイントで状況が一変します。そのあと外からも内からも圧力が高まり、どん底で計画が崩れます。第二幕が単調だと感じたら、主人公の作戦が少なくとも2回は変わっているか確かめてください。同じ挑戦を障害だけ大きくしてくり返しても、盛り上がりにはなりません。

ミッドポイント

ミッドポイントは第二幕の真ん中にある転換点で、賭け金を上げるか、目標の中身そのものを変えます。よくあるのは「見せかけの勝利」(欲しかったものを手に入れたのに、それでは足りないと分かる)か、「見せかけの敗北」(負けたように見えて、本当の問題が見えてくる)です。よいミッドポイントは第二幕を手ざわりの違う前半と後半に分けます。前半の主人公は受け身で反応しているだけですが、後半では自分から動き出します。

第三幕:解決

第三幕は最後の4分の1で、主人公はそれまでに学んだことを使って中心の対立に立ち向かい、物語は新しい日常に落ち着きます。どん底かその直後の決断から始まり、クライマックスへ向かって高まり、代償と変化を見せる短い結末で終わります。

強い第三幕は、第一幕で仕込んだもの(技術、欠点、ひとことのセリフ、小道具)を回収します。第三幕で初めて出てきた人物や、ただの偶然でクライマックスが片づくなら、構成が本来の働きをしていないということです。

幕の切り替わりがうまく働く条件

幕の切り替わり(プロットポイント)がうまく働くのは、物語を後戻りできない方向へ曲げ、次の幕に新しい問いを渡すときです。どこで幕を切るか迷ったら、次の3つで確かめてみてください。

  • 後戻りできないこと:切り替わったあと、主人公は元の状態に戻れません。扉が閉まる、秘密がばれる、約束を交わす、といった出来事です。
  • 新しい問い:第一幕は「この人は引き受けるのか」、第二幕は「勝てるのか」、第三幕は「何を払うことになるのか」を問います。切り替わりのたびに、問いが次のものへ入れ替わります。
  • 選択であること:いちばん強い切り替わりは、事故ではなく決断です。出来事に迫られて曲がる場合でも、主人公がどう応えるかを選ぶ姿を見せます。

テレビではこの言葉がもっと文字どおりに使われます。民放の連続ドラマではCMの入る位置が幕の切れ目になり、1時間枠をいくつかの短い幕に分けて、それぞれを次が気になる引きで終えます。この組み立ては連続ドラマの脚本の書き方で説明しています。

三幕構成の例:日本の映画で見る

日本でもよく知られた2本の映画を、三幕に分けてみます(あらすじは当サイトでまとめたものです)。上映時間が違うので、分数よりも割合に注目してください。

『千と千尋の神隠し』(2001年)

  • 第一幕:引っ越しの途中、ふてくされた千尋は両親とトンネルを抜け、不思議な町に迷い込みます。両親は豚に変えられ、千尋は湯婆婆と契約して名前を奪われ、「千」として油屋で働くことになります。両親を助けて元の世界に帰る、という目標がここで決まります。
  • 第二幕:千は仕事を覚え、カオナシやオクサレ様と出会い、少しずつ周りに認められていきます。後半では、ハクが傷を負って倒れ、目標は「自分が帰る」から「ハクを助ける」へと変わります。暴れるカオナシと傷ついたハク、帰れるあてのない状況が、どん底になります。
  • 第三幕:千は自分の意思で電車に乗り、銭婆のもとへ向かいます。帰り道でハクの本当の名前を思い出し、最後には湯婆婆の出す問いに自分の力で答えて、両親とともに元の世界へ戻ります。

『君の名は。』(2016年)

  • 第一幕:東京の高校生・瀧と、山あいの町・糸守に住む三葉が、ときどき体が入れ替わるようになります。ある日、入れ替わりがぷつりと途絶え、瀧は記憶の風景だけを頼りに三葉を探しに行こうと決めます。
  • 第二幕:飛騨を訪ねた瀧は、糸守が3年前に彗星の落下で消え、三葉もそのとき亡くなっていたと知ります。このミッドポイントで、目標は「会いに行く」から「町を救う」へと変わります。町の人を逃がそうとする計画は、町長である三葉の父に拒まれて行き詰まります。
  • 第三幕:黄昏どきの山頂で2人はようやく言葉を交わし、三葉は自分の力で父を説得しに走ります。そして数年後の東京で、互いの名前を忘れた2人が階段ですれ違い、思わず振り返る結末が、物語の代償と変化を見せます。

どちらの映画でも、ミッドポイントは障害を足すだけでなく目標そのものを変えています。そしてクライマックスは、主人公が第二幕で身につけたもの(千尋の自立、三葉と瀧の記憶)で勝ち取られています。

三幕構成でよくある失敗と直し方

  • 第一幕が長い:長編で、きっかけとなる出来事が15ページ(ペラ30枚)より後ろにあるなら、観客がもう知っている主人公の情報をくり返す場面を削ります。
  • 第二幕がたるむ:本物のミッドポイントを軸に前後半に分けるか、小さな目標を持った4つのシークエンスに分けます。
  • クライマックスが受け身:助けに来た誰かや偶然ではなく、主人公自身が結果を引き起こすようにします。
  • 結末が唐突:新しい日常を見せ、冒頭と響き合う場面を1つか2つ入れます。

もっと細かく組み立てたいときは、同じ三幕を15のビートに分けるビートシートと箱書きが使えます。五幕構成や起承転結、時系列を崩した構成との比較は、物語の構成のガイドにまとめています。

三幕構成と起承転結の違い

日本では、三幕構成と並んで起承転結がよく使われます。三幕構成が「主人公が目標を追い、対立が高まって決着する」という対立の型であるのに対し、起承転結は「転」で視点や状況をがらりと変え、「結」でそれまでの要素を新しい見え方でまとめる、展開の型です。プロットを作るときは、起を第一幕、承と転の前半を第二幕、転の後半と結を第三幕に重ねて考えると、両方の良さを生かせます。詳しくはプロットの書き方もご覧ください。

三幕構成の歴史

物語に始まり・中盤・終わりがあるという考えは、紀元前335年ごろに書かれたアリストテレスの『詩学』にさかのぼります。そこでは、悲劇は部分が必然的につながった1つの完結した行為であるべきだ、と論じられています。脚本術としての三幕構成が生まれたのはずっと後のことです。シド・フィールドは1979年の『Screenplay』で、設定・対立・解決を2つのプロットポイントで区切る「パラダイム」を示しました。1つ目は最初の4分の1の終わり近くで物語を第二幕へ、2つ目は第二幕の終わり近くでクライマックスへと向かわせます。その後の書き手たちが、長い第二幕の蝶番としてミッドポイントを加えました。

三幕構成を使うべきとき

三幕構成は、物語を流し込む型ではなく、診断の道具として使うのがおすすめです。とくに役に立つのは、主人公が1人で中心の目標が1つの長編映画や小説です。中盤のたるみや、きっかけの遅さが、ふつうの割合と比べるとすぐに見つかります。一方で、群像劇、話数ごとに完結する連続ドラマ、盛り上がりよりも空気感やくり返しで見せる作品には、きれいには当てはまりません。三幕に収まらない物語なら、ストーリーサークルや15ビートシートのように、細かい型や別の型を試してみてください。

映画・ドラマ・舞台・小説での三幕構成

  • 映画:幕は上映時間の割合で、およそ25%、50%、25%です。第一幕の終わりが遅いと、観客は「始まるのが遅い」と感じます。
  • テレビドラマ:民放の1時間枠はCMで4〜6つほどの幕に区切られ、どの幕も転換で終わります。配信ドラマにはCMがありませんが、転換の位置は残っています。
  • 舞台:今でも休憩をはさんだ二幕や三幕の作品が多く、幕は観客が客席の外へ持ち出したくなる転換で下ります。
  • 小説:同じ割合をページではなく章に当てはめます。第一幕の終わりは、だいたい本の4分の1あたりに来ます。

Scenaloomで三幕構成を組む

Scenaloomのビートボードは「三幕構成」「15ビートシート」「ヒーローズ・ジャーニー」から始められ、各ビートは目標の長さに対するふつうの割合の位置に置かれます。目標の長さは初期設定で110ページなので、変更しないかぎり第一幕の終わりは27ページ付近、ミッドポイントは55ページ付近に来ます。ストーリーマップには目標の長さが示され、それを超えたページは赤く表示されます。アウトラインにはエピソードごとの計画を、シーンボードではシーンをカードとして幕のあいだで動かせます。くわしくはアウトラインとビートを読むか、プロジェクトを始めてみてください。

よくある質問

三幕構成とは簡単にいうと何ですか?

物語を設定・対立・解決の3つに分ける構成法です。第一幕で主人公を紹介し、目標を引き受けたところで終わります。第二幕では高まる障害とミッドポイントでその決意が試され、第三幕のクライマックスで中心の対立に決着がつきます。長編では各幕がおよそ25%、50%、25%になります。

三幕構成の割合はどのくらいですか?

およそ1:2:1です。110ページの脚本なら第一幕が約27ページ、第二幕が約55ページ、第三幕が約28ページです。日本のペラ(200字詰め)で120分の映画を書くなら、ペラ240枚のうち第一幕が60枚前後、第二幕が120枚前後、第三幕が60枚前後になります。

ミッドポイントでは何が起きるのですか?

物語のちょうど真ん中で、賭け金が上がるか、目標が変わる転換点です。見せかけの勝利か見せかけの敗北の形をとることが多く、ここを境に主人公は受け身から攻めに転じます。ミッドポイントがないと、第二幕は同じ挑戦を障害だけ大きくしてくり返すように感じられがちです。

三幕構成と起承転結はどちらを使えばいいですか?

対立を軸に盛り上げていく長編映画やエンターテインメントなら三幕構成、日常の変化や意外な視点の転換で見せる短編や4コマ的な話なら起承転結が向いています。2つは対立するものではなく、起承転結の各パートを三幕に重ねてプロットを組む書き手も多くいます。

三幕構成とビートシートは同じものですか?

違います。三幕構成は設定・対立・解決という大きな枠組みで、ビートシートはその枠の中にある具体的な転換点(きっかけ、ミッドポイント、どん底など)を、おおよそのページとともに並べたものです。15ビートシートは、三幕構成をくわしくしたものと考えると分かりやすいでしょう。

三幕構成はどんな物語にも当てはまりますか?

いいえ。多くの西洋の映画や小説の運び方をよく説明しますが、起承転結のような四部構成の物語、1話完結のエピソードを重ねる物語、主人公が何人もいる物語では、転換の位置が違ってきます。主人公1人、目標1つの長編には便利な基本形ですが、すべての物語が従うべき決まりではありません。