リネンの机に置かれた脚本の原稿と鉛筆、クリップ

ドラマ脚本、とくに連続ドラマの第1話(英語ではパイロットと呼びます)は、そのシリーズが何者で、なぜ続けていけるのかを示すために書く1話です。書くときは、まず話を生み続けるシリーズの「エンジン」を決め、設定の始まりを描く第1話にするか、ふだんの回のように始める第1話にするかを選び、30分枠か1時間枠かといった放送の形に合わせて構成し、短い企画書(シリーズの設定資料)で支えます。

連続ドラマの第1話には、映画の脚本にはない2つの仕事があります。1話として満足できる物語を語りきること、そして閉じる問いより多くの問いを開き、読み手に第8話を想像させることです。第1話の問題の多くは、このどちらか一方しかしていないことから生まれます。

ドラマ脚本と映画脚本の違い

連続ドラマの第1話が長編映画の脚本と違うのは、主人公がたいてい変わりきらないことです。映画は中心の問いに答えを出しますが、シリーズはそれを持ち続けます。第1話は、世界、レギュラーの登場人物たち、そして毎週対立を生み出す状況、つまり番組のエンジンを紹介し、結末は物語を閉じるのではなく、先を指し示します。

  • 長編映画:1つの物語、1つのアーク、決着のつく結末。
  • 連続ドラマの第1話:その回の物語は決着させ、シリーズの問いは開いたまま残し、ふだんの1話がどんな形かを見せる。

始まりを描く第1話か、ふだんどおりの第1話か

第1話には大きく2つの型があります。1つは、シリーズを生む出来事(転校、事件、遺産相続、異動など)そのものを描く型で、第1話が「始まりの物語」になります。もう1つは、番組がすでに動いている状態に観客を放りこみ、ふだんの回と同じように見せる型です。前者は設定を説明しやすい反面、第2話以降と雰囲気が違ってしまうことがあります。後者は番組の形がはっきり伝わる反面、走りながら世界を説明しなければなりません。第5話がどんな感じになるかをいちばんよく伝えられるほうを選んでください。

日本の連続ドラマでは、主人公が新しい職場や土地にやって来る「始まりの物語」型の第1話がよく見られます。一話完結の刑事ドラマや医療ドラマでは、第1話からその回の事件を解決しつつ、主人公の過去やシリーズを貫く謎を少しずつのぞかせる形も定番です。

ドラマ脚本の枚数の目安

枚数は放送の形によって変わります。日本の民放の1時間枠はCMを除くと実際の本編がおよそ45分前後で、400字詰め原稿用紙で60枚前後(ペラ120枚前後)がよくいわれる目安です。30分枠ならその半分ほどです。ハリウッド形式の英語の脚本では、1ページがおよそ1分なので、30分のコメディで25〜35ページ、1時間ドラマで50〜65ページほどになります。配信ドラマはCMに合わせて区切る必要がないぶん長さにばらつきがありますが、この範囲を目安に書けば読みやすい原稿になります。コンクールに出すときは、必ず応募要項の枚数指定を優先してください。

アバン(冒頭の導入)

アバン(アバンタイトル)は、オープニングや主題歌、タイトルの前に置かれる短いシーンや場面の連なりで、観客をつかむためのものです。英語ではティーザー、コールドオープンと呼ばれます。1時間ドラマではその回の問題を仕込むことが多く、30分のコメディではそれだけで完結する笑いの場面になることもあります。長さはたいてい数分です。

いちばん良いアバンは、問題の内側から始まります。当サイトのシナリオ・ミュージアムにある1ページ脚本Last Callは、状況を説明するカットも背景の説明もなく始まり、半ページのうちに、誰が何を求めていて、なぜそれが今夜はかなわないのかが分かります。

CM前の「引き」と幕の切れ目

幕の切れ目は、1話の中にあらかじめ置かれた区切りです。もとはCMのために置かれたものですが、今も構成のリズムとして使われています。どの区切りも、真相の発覚、逆転、決断といった「引き」で終え、次のブロックが見ずにいられないものにします。アメリカのネットワーク局の1時間ドラマはティーザーと4〜6幕、30分のコメディはコールドオープン、2〜3幕、短いエピローグで組まれることが多く、日本の民放ドラマでも、CMの位置ごとに引きを作り、最後に次回への強いフックを置くのが基本です。

アメリカの脚本では、各幕を新しいページから始め、幕の名前と「END OF ACT」の行を書き入れます。日本の脚本では幕の名前を書くことはあまりなく、シーン番号を通しで振るのが一般的ですが、アバンの終わりやCMの入る位置を意識して、そこに引きを置きます。日本の書式で書くと、たとえば次のようになります。

【アバン】

1 ○島の港・桟橋(夜)
   最終のフェリーが無人の桟橋に着いている。タラップは下りたまま。
   誰も降りてこない。
   巡査の加瀬真一(32)、懐中電灯で甲板を照らす。
   フックに掛かったままのコート。湯気の立つ紙コップ。
加瀬「(無線に)本署、18時15分の便、着きました」
   間。
加瀬「……乗客が、一人もいません」

(タイトル)

ドラマ脚本の書式

日本のドラマ脚本は、映画と同じく、柱、ト書き、セリフで書きます。違うのは周りの枠組みで、表紙にはシリーズのタイトルと話数(「第1話」やサブタイトル)を書き、人物表を付け、アバンの区切りを示します。ハリウッド形式の1カメラのドラマも長編映画と同じページの組み方ですが、マルチカメラのシットコムは伝統的にセリフを1行おきに組む別の形を使います。書く番組の種類に合わせて、実際の脚本を確かめてください。基本の書き方は脚本の書き方、ハリウッド形式の要素は脚本の書式ガイドにまとめています。

連続ドラマの第1話の書き方:7つの手順

  1. エンジンを決める:話を生み続ける状況です。つぶれかけた旅館を営む家族、未解決事件しか担当できない刑事、かつての依頼人の敵ばかりを弁護する弁護士。
  2. ログラインを2つ書く:シリーズ全体のものと、第1話のもの。
  3. 始まりを描くか、ふだんどおりに始めるかを選び、最後のページで観客にどんな気持ちになってほしいかを決めます。
  4. 1話をブロックに分ける:Aストーリー(その回の中心の問題)、Bストーリー、1時間枠ならCストーリーも書き出します。
  5. レギュラーの人物は、経歴ではなく行動で紹介します。どの人物も、誰かとぶつかる何かを求めているようにします。
  6. 先へのフックで終える:第2話に向けて状況を変える何かを置きます。
  7. 初稿を書き、枚数を放送枠と照らし合わせ、世界の説明しかしていないシーンを削ります。

企画書(シリーズの設定資料)とは

連続ドラマの企画書は、番組の土台になる資料です。英語圏ではシリーズ・バイブルと呼ばれます。企画の芯と作品のトーン、主な登場人物とその変化、世界とそのルール、第1シーズン(日本の地上波なら1クール、全10話前後)の流れと各話の短いアイデアを書きます。自主的に書く第1話には、5〜15ページほどの企画書を添えるのが一般的です。第1話が単発ではなく、何かの始まりであることを示せます。

  • タイトル、シリーズのログライン、そして企画意図(なぜ今この物語なのか、なぜ何話も続けられるのか)。
  • 登場人物:それぞれが何を求め、何を隠し、1クールを通してどう変わるか。
  • 世界:対立を生むルール、場所、組織。
  • 全体の流れ:第1話の始まりから最終話の終わりまでと、各話の1行あらすじ。あらすじの書き方はシノプシスのガイドをご覧ください。

ショートドラマと縦型ドラマの1話

ショートドラマ(縦型ドラマ、マイクロドラマとも呼ばれます)は、1話がおよそ1〜3分と非常に短い連続ドラマの形で、多くはスマートフォン向けに縦長で撮影されます。各話は最初の数秒ですばやく観客をつかみ、クリフハンガーで終わり、感情の転換は民放の1時間ドラマよりはるかに速く訪れます。第1話の考え方はそのまま使えますが、ぎゅっと縮めます。第1話でエンジンを示し、何十話も続く対立を約束するのです。くわしくはショートドラマのガイドで説明しています。

Scenaloomで連続ドラマを書く

Scenaloomはエピソードを持つシリーズのプロジェクトに対応していて、エピソードごとのアウトラインと、シーズン全体を並べるエピソードボードがあります。「世界観」はシリーズの設定資料として使え、ログライン、中心テーマ、自分で作るカスタムのメモといった項目を置けます。縦型のシリーズには、世界観の「ショートドラマ」テンプレートと、プロジェクトに採用できる「ショートドラマ・プロデューサー」のアドバイザーがあります。くわしくはアウトラインとビートを読むか、シリーズを始めてみてください。

よくある質問

連続ドラマの第1話(パイロット)とは何ですか?

テレビドラマのシリーズの最初の1話で、その番組がどんなものかを示すために作られたり書かれたりします。アメリカでは、テレビ局や配信会社がパイロットを見てシリーズ化を決め、書き手は自主的に書いた第1話を実力を示す見本として使います。主な登場人物、世界、今後の話を動かす状況を紹介する1話です。

1時間ドラマの脚本は何枚くらいですか?

日本の民放の1時間枠なら、400字詰め原稿用紙で60枚前後(ペラ120枚前後)がよくいわれる目安です。ハリウッド形式なら50〜65ページほどになります。CMを除いた実際の放送時間や、コンクールの枚数指定によって変わるので、応募要項がある場合はその指定を優先してください。

アバンとオープニングの違いは何ですか?

アバンは、オープニングや主題歌、タイトルの前に置かれる導入の場面です。その回の事件や問題を見せて観客をつかむのが役目で、そのあとにオープニングが流れて本編に入ります。英語ではティーザーやコールドオープンと呼ばれ、コメディではそれだけで完結する笑いの場面になることもあります。

ドラマの脚本には幕の区切りが必要ですか?

アメリカの地上波向けの脚本では、CMで区切るために幕を書き入れるのがふつうです。日本の脚本では幕の名前を書くことはあまりありませんが、CMの位置やアバンの終わりを意識して引きを作ります。配信ドラマでも、一定の間隔で転換を置くことは変わりません。

企画書は第1話より先に作るべきですか?

先に短い企画書を作る書き手は多くいます。エンジン、人物の長い変化、1クールの流れが決まっていると、第1話の選択がしやすくなるからです。先に第1話を書いて作品の声をつかみ、それから企画書を組み立てる書き手もいます。どちらにしても、完成した企画には両方をそろえるのがふつうです。