ノートと付箋、灯りのともったデスクライト。アイデア出しの机

シノプシスとは、物語の主な登場人物、大きな転換点、そして結末までを、短い文章でまとめたあらすじのことです。長さはふつう原稿用紙1〜2枚ほどです。脚本のシノプシスは、映画の始まりから終わりまでに何が起きるかを読み手に伝え、100ページの脚本を読まなくても物語を判断できるようにします。

プロデューサー、制作会社、シナリオコンクール、出版社や企画開発の担当者は、どこもシノプシスを求めます。そしてシノプシスは、脚本そのものより遠くまで届くことがよくあります。書き手自身にとっても、いちばん役に立つ道具の1つです。物語を1枚にまとめてみると、たるんだ中盤や、冒頭に答えていない結末が、どんな改稿よりも早く見えてきます。

シノプシスとは

シノプシスは、筋書き全体の要約で、現在形の文章で書き、結末も明かします。本の帯や映画の予告編とは違い、秘密を残しません。読み手は、物語がどう決着するかを知らなければ、それがうまくいっているかを判断できないからです。

良い脚本のシノプシスは、3つのことを同時にこなします。物語を順番どおりに語り、誰の物語でその人が何を求めているのかをはっきりさせ、作品のトーンを伝えます。コメディのシノプシスは、ギャグも見せ場のアクションも入っていないのに、サスペンスのシノプシスより軽やかに読めるはずです。違いは、何を描くかの選び方と、話を進める速さにあります。

シノプシスとログライン、プロット、トリートメントの違い

ログライン、シノプシス、トリートメントは、同じ物語を3つの長さで書いたものです。ログラインは1文、シノプシスは1〜2枚まで、トリートメントはもっと長い文章で、多くは数ページにわたり、シークエンスごとに物語をたどります。

種類長さ書くこと結末
ログライン1〜2文主人公、目標、障害、失うもの。企画の芯を売り込む書かない
シノプシス数段落〜原稿用紙1〜2枚設定、主な転換、決着。脇役やサブプロットはほとんど省く書く
トリートメント数ページ以上主な場面、人物の描写、ときにはセリフも入れて生き生きと語る書く
プロット・箱書き作品による書き手が使う作業用の資料。シーンやビートの一覧書く

それぞれの書き方は、ログラインのガイド、トリートメントの書き方、箱書きとビートシートのガイドで説明しています。日本では「プロット」が、シノプシスと同じような文章のあらすじを指して使われることも多いので、相手が何を求めているのかを確かめてから書くと安心です。

シノプシスの長さの目安

長編映画の脚本のシノプシスは、400字詰め原稿用紙で1〜2枚、およそ400〜800字がひとつの目安です。数行、200字ほどの短いものを求められることもあれば、複雑な長編や連続ドラマの企画書では2〜3枚になることもあります。

長さは、誰が読むかで決まります。シナリオコンクールの多くは、応募要項で「あらすじ800字以内」「400字詰め1枚」のように字数や枚数を指定しています。プロデューサーは同僚に回せる1枚を求めるかもしれません。まずは1枚の版を書いてください。1枚をひと段落に削るほうが、ひと段落を意味の通る1枚に引きのばすより、ずっと簡単です。

1枚のシノプシスの構成

1枚のシノプシスは、物語そのものの形に沿います。設定に1段落、中盤に1〜2段落、クライマックスと決着に1段落です。多くの長編では、4〜6段落が自然な長さになります。

  1. 最初の段落:主人公をその人らしい1つの特徴とともに紹介し、その世界と物語のきっかけを書きます。最初の文で誰がどこにいるかを示し、段落の最後で問題を提示します。
  2. 引き受け:主人公を物語に縛りつける決断や出来事(第一幕の終わり)を、目標とともにはっきり書きます。
  3. 深まる事態:ミッドポイントの転換を含めて、中盤のいちばん大きな障害を2〜3つ書きます。見せ場をすべて並べるのではなく、物語の向きを変える出来事を選びます。
  4. どん底:成功が不可能に思えるほど、主人公が何を失い、何を知るのか。
  5. クライマックスと決着:中心の対立がどう決着し、主人公の何が変わったのか。におわせずに、何が起きるかを書きます。

主な人物は、初めて出てきたときに名前と年齢、またはひとことの特徴を添えて紹介します。たとえば「真島英二(64)」のように、脚本の人物表と同じ書き方です。名前を出す人物は3〜4人までにしてください。それ以外は「大家」「ライバルの漁師たち」のように書けば十分です。

シノプシスの書き方の手順

シノプシスを書くには、ログラインとビートシートから出発し、物語の向きを変える6〜8つの出来事を選び、それを物語の順番に、現在形のつながった文章で書いてから、分かりやすさとトーンを整えます。

  1. 転換点を並べる:きっかけ、第一幕の終わり、ミッドポイント、どん底、クライマックスを、プロットや箱書きから抜き出します。
  2. 因果でつなぐ:出来事と出来事のあいだに「だから」「そのため」を入れてみます。前の出来事から次が出てこないなら、シノプシスにも、おそらく脚本にも穴があります。
  3. 止まらずに書く:まずは長めに、現在形の三人称で書き、それから削ります。
  4. 結末に関わらないサブプロットは削る:サブプロットをシノプシスに入れるのは、クライマックスがそれに左右される場合だけです。
  5. 感情は行動で見せる:「彼女は迷っている」より「彼女は手紙を燃やす」のほうが多くを伝えます。
  6. 物語を知らない人に読んでもらい、話を言い直してもらう:相手がつかえたところが、シノプシスの分かりにくいところです。

シノプシスの例

当サイトのシナリオ・ミュージアムにある1ページ脚本『The Keeper』を、昭和の終わりの日本の離島に置きかえ、長編として膨らませたオリジナルのシノプシスです。長編の筋はこのガイドのために考えたものです。

昭和60年。真島英二(64)は、離島・鴉島の灯台を9年間守り、毎晩、日誌に「船影なし」と書きつけてきた。春には灯台が自動化され、英二は島を下りることが決まっている。最後の冬、船などいるはずのない沖から、英二の灯りに応えるように光が瞬く。

英二は報告するが、海上保安部は何も見つけられない。光がふたたび現れたとき、英二は亡き妻に教わった古い信号で応え、返事が届く。たったひとこと、「ノコレ」。思い過ごしではないと証明するため、英二は命令に背いて灯台の小舟を出し、漂流する漁船の中で、父の船が沈んでからそこで暮らしていた密航者の少女・美緒(19)を見つける。

英二は美緒を灯台にかくまい、2人は灯りを守る仕事を通して、ぎこちない友情を育てていく。物語の半ば、自動化の工事のために本土から技師の久保(40代)が予定より早くやって来て、もう1人いる気配に気づき、英二を報告する。英二は美緒を守るために嘘をつき、職務を停止される。

島を追われる日が迫る中、英二は古い無線の記録の中に、ある書きこみを見つける。美緒の父の船が沈んだ夜、父は灯台に無線を送っていた。そして英二は、2交代続きの勤務のあとで眠りこみ、その呼び出しを聞き逃していたのだ。記録を読んだ美緒は、嵐の夜、小舟で島を出ていく。

嵐で新しい自動装置が止まり、英二は停職を破って、手で灯をともす。その光が美緒を島へ連れ戻し、座礁しかけていた救助船も救う。春、灯台は予定どおり自動化されるが、英二は島の管理人として残り、美緒は本土で海上保安庁の無線通信士をめざして訓練を始める。

この例がしていることに注目してください。名前を出す人物は3人だけ、結末ははっきり書き、気持ちは人物の行動で見せ、大きな転換ごとに1段落を使っています。

シノプシスでよくある失敗

  • 結末を隠す:「英二は真実にたどり着けるのか?」で終わるのは宣伝文で、シノプシスではありません。
  • 名前が多すぎる:新しい人物が出てくるたびに、読み手が追うものが増えます。
  • 物語を語らずにシーンを並べる:「そして……そして……そして」は箱書きのように読めます。原因と結果でつなぐと、物語として読めます。
  • 出来事ではなくテーマを書く:テーマを運ぶ物語を書き、テーマは読み手に見つけてもらいます。
  • 過去形で書く:シノプシスは、脚本と同じく現在形(「〜する」)で書きます。「〜していた」を使うのは、物語が始まる前の出来事や経緯を説明するときだけです。

Scenaloomでシノプシスを書く

Scenaloomの脚本プロジェクトでは、ストーリーバイブルである「世界観」に、ログライン、中心テーマ、自分で作るカスタムの項目を置けるので、シノプシスを、そのもとになったログラインの隣に置いておけます。小説のプロジェクトには、ストーリーバイブルに「あらすじ」の欄があります。Scenaloom AIに手伝いを頼むと、AIはストーリーバイブルを読んだうえで提案し、アウトラインとビートボードには、要約する転換点がひとまとめに残ります。くわしくは世界観とナレッジファイルを読むか、プロジェクトを始めてみてください。

よくある質問

シノプシスとは何ですか?

物語のあらすじを、主な人物、大きな転換点、結末まで含めて短い文章にまとめたものです。脚本のシノプシスはふつう原稿用紙1〜2枚ほどで、現在形で書きます。プロデューサーやコンクールの審査員が、脚本全体を読む前に物語を判断するために使います。

シノプシスとあらすじの違いは何ですか?

ほぼ同じ意味で使われます。映画やアニメの業界では「シノプシス」、コンクールの応募要項や出版では「あらすじ」と呼ぶことが多いですが、どちらも結末までを含めた物語の要約です。本の裏表紙の紹介文のように結末を伏せたものは、あらすじと呼ばれても、シノプシスとしては不十分です。

コア・シノプシスとは何ですか?

物語の核だけを、ごく短い数行にまとめたあらすじを指して、脚本講座などでそう呼ぶことがあります。誰が、何をきっかけに、何を求め、どうなるのかだけを書いたもので、ログラインとシノプシスの中間の長さです。長いシノプシスを書く前に、物語の背骨を確かめるのに役立ちます。

シノプシスは何文字くらいで書けばいいですか?

長編の脚本なら、400字詰め原稿用紙1〜2枚、およそ400〜800字が目安です。200字ほどの短いものを求められることも、連続ドラマや複雑な長編で2〜3枚になることもあります。コンクールや制作会社が字数を指定しているときは、その指定をきっちり守ってください。

シノプシスに結末は書くべきですか?

書きます。中心の対立がどう決着するのかを知らなければ、読み手は物語がうまくいっているかを判断できないからです。結末を伏せると、観客向けの宣伝文になってしまいます。それは業界の読み手ではなく観客のために書く、別の文書です。

シノプシスとログラインの違いは何ですか?

ログラインは、主人公、目標、障害、失うものを1〜2文で伝えて企画を売り込むもので、結末は書きません。シノプシスは1〜2枚までの文章で、結末も含めて物語全体を語ります。多くの書き手は、先にログラインを書き、それを広げてシノプシスにします。