リネンの机に置かれた脚本の原稿と鉛筆、クリップ

脚本でLINEやメールを書くときは、スマホの画面を(インサート)で大きく見せるか、ト書きの中に「画面に『今どこ?』」のように書き、メッセージの文面を『』でくくってそのまま書きます。やりとりが続く場面なら、送り手の名前に(LINE)と添えて並べるか、二人の場所をカットバックで交互に見せます。

スマホのメッセージは、脚本の書式の慣例が固まったあとに生まれたものなので、ひとつの決まった書き方はありません。それでも、だれが送ったか、何と書いてあるか、観客にどう見えるか、の三つがはっきりしていれば、どの書き方でも通じます。このページでは主な四つの書き方を、オリジナルの例で紹介します。

書き方1:インサートで画面を見せる

インサートは、スマホの画面などの物をアップで差し込むカットです。場面の流れを止めるほど重いメッセージを、画面いっぱいに見せたいときに向いています。インサートのあとは、元の場面に戻ったことがわかるように書きます。

○深夜バス・車内(夜)
   陽菜、窓にもたれてうとうとしている。スマホが震える。

   (インサート)スマホの画面
   「お父さん」からのLINE『今夜は帰ってくるな』

   陽菜、跳ね起きる。もう一度読む。

インサートは、本当に大事なメッセージのためにとっておきます。1ページに三回もインサートがあると、読む人には紙芝居のように感じられてしまいます。

書き方2:ト書きの中に文面を書く

多くのメッセージは、ト書きにそのまま書くのがいちばんすっきりします。声に出したセリフではなく画面の文字だとわかるように、「画面に」と書いて、文面を『』でくくります。

   蓮、片手の親指で打つ。画面に『ごめん遅れる、席とっといて』
   「席とっといて」を消す。『ごめん遅れる』だけ送る。

打つ、消す、打ち直す、という動きはト書きで見せられます。メッセージでいちばんドラマになるのは、送った文面より、人物が送りかけてやめた言葉であることが多いからです。今の脚本では、この書き方がもっともよく使われます。

書き方3:吹き出しのやりとり

最近のドラマや映画では、スマホの画面に切り替えず、俳優の横に吹き出しが浮かぶ見せ方もよく使われます。その場合は、最初に一度だけ見せ方をト書きで説明し、あとは送り手の名前に(LINE)を添えて、文面を『』で並べます。

   美咲、トーク画面をスクロールする。
   メッセージが吹き出しになって、美咲の横に浮かぶ。
姉(LINE)『もう言った?』
美咲(LINE)『今夜言う。約束』
   「約束」の吹き出しが、少し長く画面に残る。
   美咲、それを消す。

名前(LINE)『…』の形は、三往復以上のやりとりでも目で追いやすいのが利点です。人物名のあとに(メール)や(画面)と書く人もいて、どれでも通じます。大切なのは、メッセージを声に出したセリフと取り違えられないことです。そのため、セリフの「」ではなく『』を使うのがおすすめです。

既読、スタンプ、通知

日本のドラマでは、LINEならではの小道具がそのまま物語になります。ト書きで具体的に書いておきましょう。

  • 既読:『既読』が付いたのに返事が来ない。付かないまま何時間も経つ。どちらも一行で緊張を生みます。
  • スタンプ:どんなスタンプかを言葉で書きます。例:うさぎが土下座しているスタンプ。
  • 通知:ロック画面に一行だけ見える通知は、全文を見せないことで想像させられます。
  • 送信取り消し:『メッセージの送信を取り消しました』の一行は、言いかけてやめた言葉そのものです。

書き方4:カットバックで両方を見せる

別々の場所にいる二人がメッセージを送り合い、両方を見せたいときは、カットバックを使います。やりとりのたびに柱を立て直す必要がなくなります。

○出版社・編集部(夜)
   理沙、デスクでノートパソコンに向かっている。

○駐車場・停めた車の中(夜)
   健二、運転席でスマホを握っている。

   (以下、カットバック)

理沙(LINE)『終わった?』
   健二、空っぽの助手席を見る。
健二(LINE)『まだ』
   理沙、ノートパソコンを閉じる。

電話の場面も同じ考え方で書けます。シナリオ・ミュージアムの「Two Calls」は、カットバックで進む会話を最初から最後まで見られる例です。カットバックの書き方は回想シーンとカットバックのガイドでも説明しています。

メール、SNS、ビデオ通話

  • メール:(インサート)メール画面、と書き、件名と、物語に必要な文だけを『』で書きます。
  • SNS:スクロールする様子をト書きで書き、物語を動かす投稿を一つか二つだけ取り出します。タイムラインを丸ごと写すと読めません。
  • ビデオ通話:一つのシーンとして扱います。こちら側の人物がいる場所で柱を立て、パソコンの画面の様子をト書きで書き、画面の向こうの人物のセリフは、名前(画面)「…」のように書きます。両方の場所を見せるならカットバックにします。

LINEやメールの脚本での書き方の選び方

場面向いている書き方
一通で場面が変わるインサート
場面が進むあいだの短いメッセージト書きの中に文面を書く
やりとりそのものが場面名前(LINE)『…』の吹き出し
別々の場所の二人カットバック

どの書き方でも、文面は人物が打つとおりに書きます。句読点のなさ、変換ミス、絵文字の選び方は、一行のセリフ以上に人物を語ることがあります。そして、メッセージの場面は短く。人が文字を読む姿は、何を打つか迷う姿ほどドラマになりません。

最後に、文面を全部隠して場面を読んでみてください。俳優の表情と動きで物語が伝わるなら、メッセージは脇役として短くてかまいません。何も起きないなら、場面にもっと強い出来事が必要かもしれません。メッセージがいちばん効くのは、それを受け取った人の反応が見えるときです。届いたらすぐ、その反応をト書きで書きましょう。

Scenaloomで書く

Scenaloomでは、(インサート)はショットかト書きとして、カットバックで並べる場所はシーンとして、メッセージの行はト書き、またはセリフとして書けます。行に付けるコメントには参考画像を添えられるので、スマホの画面をどう見せたいかを共有するのにも便利です。くわしくは脚本エディターをご覧ください。脚本を書きはじめる

よくある質問

LINEのメッセージの脚本での書き方を教えてください

ト書きの中に「画面に」と書いて、文面を『』でくくるのが一番シンプルです。重いメッセージは(インサート)でスマホの画面を見せ、やりとりが続くなら、名前(LINE)『…』の形で並べます。一本の脚本の中では書き方をそろえましょう。

メッセージの文面は「」と『』のどちらで書きますか?

声に出すセリフと区別するために『』を使うのがおすすめです。「」はセリフに使うので、メッセージにも「」を使うと、声に出して言っているように読まれてしまうことがあります。

二人のLINEのやりとりはどう書きますか?

両方の人物を見せるなら、それぞれの場所に柱を立ててから(以下、カットバック)と書き、名前(LINE)『…』の行と、受け取った人の反応のト書きを交互に書きます。片方だけを見せるなら、その人物の側をト書きで書き、返事が画面に届く様子を見せます。

ビデオ通話の場面はどう書けばいいですか?

こちら側の人物がいる場所で柱を立て、画面の様子をト書きで書きます。画面の向こうの人物のセリフは、名前(画面)「…」のように書きます。両方の場所を交互に見せるなら、カットバックにします。

既読やスタンプは脚本に書きますか?

物語に関わるなら書きます。『既読』が付いたのに返事がない、というだけで場面に緊張が生まれます。スタンプは、どんな絵柄かを言葉で具体的に書きましょう。