リネンの机に置かれた脚本の原稿と鉛筆、クリップ

脚本で二人が同時に台詞を言うときは、同じ言葉なら「二人「せーの」」のように話す人をまとめて書き、違う言葉なら、それぞれの台詞に(同時に)と添えて続けて書きます。一方がもう一方の台詞に割り込むときは、後から話す人の台詞の頭に(かぶせて)と書きます。英語の脚本では、二人の台詞を左右2段に並べる「同時セリフ(デュアルダイアログ)」という書式を使います。

台詞はふつう、一人が話し、次の人が答える、という順番で書きます。同時の台詞は、その順番で書くと場面の意味が変わってしまう瞬間のためのものです。だれも相手の話を聞いていない口げんか、思わず同じ答えを口にする二人、声のそろった歓声などです。ふつうの台詞の書き方は脚本の書き方のルールにまとめています。

二人で同じ台詞を言うとき

二人がまったく同じ言葉を同時に言うなら、話す人を「・」でつなぐか、「二人」とまとめて、台詞を一度だけ書きます。三人以上なら「一同」「全員」がよく使われます。

○結婚式場・厨房(夜)
   ケーキが床に逆さまに落ちている。
   浩二と秀子、ケーキを見て、それから顔を見合わせる。
浩二・秀子「持ってるって言ったじゃない」
   ケータリングの店員が入ってくる。二人、同時に相手を指さす。

同じ台詞を一人ずつ順番に書くと、二人目の台詞は、からかうような口まねに読めてしまいます。まとめて書けば、二人が同じようにうろたえた反射の言葉として伝わり、笑いが狙いどおりに働きます。

違う台詞を同時に言うとき

二人が同時に違うことを言うなら、それぞれの台詞の頭に(同時に)と添え、続けて並べます。読む人には二行に見えますが、観客には同時に聞こえることが伝わります。

理沙「(同時に)だから言ったでしょ、雨になるって」
健二「(同時に)傘はちゃんと車に積んでたんだよ」

同時の台詞は、それぞれ一行か二行に収めます。読む人は二つを一度に頭に入れなければならず、長い台詞が同時に続くと、紙の上でも声に出しても追いきれません。

台詞が重なるときの脚本の書き方(かぶせて)

相手の話が終わらないうちに次の人が話しだす、部分的な重なりなら、前の台詞を「……」や言いさしで終え、後の台詞の頭に(かぶせて)と書きます。日本の現場でよく使う言い方で、「台詞をかぶせる」とも言います。

葵「あれを持っていったのは、あなたが事務所はもう……」
蓮「(かぶせて)そんなこと一言も言ってない」

単純に話をさえぎるだけなら、順番に書くのが正解です。さえぎるという行為そのものが、順番に起きる出来事だからです。括弧書きの使い方はト書きと括弧書きのガイドで、割り込みや間、テンポの作り方はセリフの書き方で説明しています。

同時の台詞が向いている場面

  • 二人が同じことを同時に言う。笑いの場面や、心が通じ合う瞬間に。
  • 二人とも相手の話を聞かずにしゃべる口げんか。中身より、重なっていることが大事な場面。
  • 同じ部屋で二つの会話が並行して進む。オフィスで二人が別々の電話をしているときなど。
  • 群衆の反応。代表の二つの声で、大勢の声を表します。

使わないほうがいいとき

  • 片方がはっきり相手をさえぎるとき。順番に書き、(かぶせて)を添えれば足ります。
  • 場面をにぎやかに見せたいだけのとき。短い台詞を交互に重ねれば、紙面を分けなくてもテンポは出せます。
  • 台詞が長いとき。二人が一段落ずつ話すなら、観客も両方は追えません。どちらの言葉が大事かを決め、もう一方は「健二、その下でしゃべり続けている」のようにト書きに回します。
  • 三人以上が別々のことを言うとき。三つめの声はト書きか、次の台詞に回します。

英語の脚本の同時セリフ(2段組み)

ハリウッド形式では、同時に話す二人の台詞を、ページを左右に分けた2段に並べます。左の段に先に話す人、右の段にもう一人を置き、それぞれの段に人物名、括弧書き、台詞を通常より狭い幅で組みます。二つの段は同じ行から始まり、両方の台詞が終わったら、ページはふつうの1段に戻ります。英語ではdual dialogueと呼びます。

同時セリフのまとまりは、一つのページに収めます。2段組みがページをまたぐと、読む人は前後のページを行き来しなければならないからです。必要ならまとまりごと次のページに送ります。ここでも、台詞を短くしておくことが役に立ちます。

Final DraftとFountainでの同時セリフ

Final Draft(.fdx)のファイルは同時セリフの設定を保存できます。Fountainのプレーンテキストでは、二人目の人物名のあとにキャレット(^)を付けると、前の台詞と組になって左右に並びます。日本語の人物名は大文字にならないので、頭に@を付けて「@健二 ^」のように書きます。くわしくはFountain形式のガイドをご覧ください。

Scenaloomで書く

Scenaloomのエディターには[同時セリフ]の操作があり、台詞を直前の台詞の横に並べられます。二人の台詞を順に書いてから、二つめの台詞にカーソルを置き、Mod+D(MacならCmd+D、WindowsならCtrl+D)を押すか、[同時セリフ]を選んでください。要素とショートカットの一覧は書式のドキュメントにあります。脚本を書きはじめる

よくある質問

脚本で二人が同時に同じ台詞を言うときはどう書きますか?

話す人を「浩二・秀子」のように「・」でつなぐか、「二人」とまとめて、台詞を一度だけ書きます。三人以上なら「一同」や「全員」がよく使われます。

二人が同時に違うことを言う場面はどう書きますか?

それぞれの台詞の頭に(同時に)と添えて、続けて並べます。どちらの台詞も一、二行に収めると、読む人が両方を一度に追えます。英語の脚本では、二人の台詞を左右2段に並べる同時セリフの書式を使います。

脚本の(かぶせて)とはどういう意味ですか?

前の人の台詞が終わらないうちに、次の人が話しはじめることを示す表記です。前の台詞を「……」などで言いさしにし、後の台詞の頭に(かぶせて)と書きます。英語の脚本の(overlapping)にあたります。

同時の台詞はどれくらい使っていいですか?

ここぞという短い瞬間だけに使います。台詞が長かったり、場面をにぎやかにしたいだけだったりするなら、ふつうに交互に書いたほうが読みやすく、テンポも出せます。

Scenaloomで同時セリフを入れるには?

二人の台詞を順番に書いてから、二つめの台詞にカーソルを置き、Mod+Dを押すか[同時セリフ]を選びます。二つめの台詞が直前の台詞の横に並び、同じ瞬間の台詞として読めるようになります。