
ログラインとは、映画やドラマの物語を1〜2文にまとめたもので、主人公、その人が求めるもの、立ちはだかるもの、失敗したら失うものを伝えます。「今、何を書いているの?」と聞かれたときに口にする物語のいちばん短い形で、聞いた人に「その脚本を読んでみたい」と思わせるのが役目です。このページでは、ログラインの書き方の型と、すぐに使えるログラインの例を紹介します。
ログラインは、企画書、プロデューサーへの売り込み、コンクールの応募、脚本の講評などで使われますが、いちばん役に立つのは誰かに見せる前です。ログラインは試験紙です。書けないなら、たいていその物語には穴があります。はっきりした目標がない、本当の敵がいない、失うものがない、のどれかです。
ログラインに入れる要素
ログラインに必要な要素は4つです。具体的な主人公、目標または問題、障害、そして賭け金(失うもの)。5つ目の「皮肉」が加わると、記憶に残るログラインになります。人物と状況がかみ合わない、ひとひねりのことです。
- 主人公:名前ではなく、その人らしさが伝わる特徴で示します。「健一」より「引退した灯台守」のほうが多くを語ります。
- きっかけ:物語を始める出来事。日本語では「〜したとき」「〜を知った」「〜がきっかけで」といった形で書くことが多いです。
- 目標:主人公が自分から取りかかること。画面に映る行動である必要があります。
- 障害:主人公を止める人や力。大きくなっていく力であるのが理想です。
- 賭け金:失敗したら失うもの。これがないと、目標はただのお使いになってしまいます。
ログラインの書き方
ログラインを手早く書くには、まず型に当てはめ、それから型っぽさが消えるまで書き直すのがいちばんです。出発点として使いやすい型は次のとおりです。
- 主人公を、物語にとっていちばん大事な特徴で示し、欠点をにおわせる形容をひとつ添えます。
- きっかけとなる出来事を、できるだけ短い言葉で書きます。
- 目標を動詞で書きます。探す、盗む、逃げる、守る、証明する。
- 障害を具体的にします。「闇の勢力」はあいまいですが、「家を買う金を出した暴力団」なら物語になります。
- 賭け金を加えます。時間制限があれば、それも入れます。
- 60〜100字ほどに削ります。人物名、サブプロット、70ページ目でしか意味を持たないことは外します。
- 物語を知らない人に声に出して読み、「どんな映画だと思う?」と聞きます。答えが自分の考えと違ったら、書き直します。
ログラインの例
当サイトのシナリオ・ミュージアムにある1ページ脚本6本を、長編として膨らませたと想定して書いた、オリジナルのログライン例です。それぞれ、少しずつ重点の置き方が違います。
Last Call(ヒューマンドラマ)
6年前に死んだはずの父親から託されたという現金の袋を持って、ずぶぬれの青年が深夜の食堂に現れる。人に心を許さない女主人は、金を追う者たちから青年をかくまい、自分に残された唯一の居場所までもが奪われる前に、決着をつけなければならない。
The Keeper(ミステリー)
9年間、何もない海を記録し続けてきた灯台守は、沖から自分の灯りに応える光を見る。島の持ち主が灯台を廃止し、自分を島から追い出す前に、誰が合図を送っているのかを突き止めなければならない。
Two Calls(サスペンス)
隔離病棟の医師は、隔離された患者と、彼女を愛する逃亡中の男とをつなぐ唯一の存在になる。男を呼び寄せれば患者を救えるのか、それとも2人を見張る男たちに彼を差し出すことになるのか、医師は決断を迫られる。
The Interview(コメディ)
堅物の転職希望者は、面接を受けているスタートアップが金曜の給料すら払えないことに気づく。給料をもらう唯一の方法は、22歳の創業者からこの会社を救うことだった。
After the Flood(ヒューマンドラマ)
川の氾濫で家族の「縁起のいい家」が流された少女は、何も変わっていないかのように町の再建を語り続ける。しかし母の沈黙が、町が本当に失ったものを認めるよう彼女に迫る。
The Locked Room(ワンシチュエーション)
真夜中のエレベーターに閉じこめられた見知らぬ3人は、配達員の荷物から聞こえるカチカチという音が、時計ではないかもしれないと気づき、互いを落ち着かせ続けなければならなくなる。
何が入っていないかに注目してください。タイトルに必要な場合を除いて人物名はなく、テーマの説明もなく、「感動の」「手に汗にぎる」といった形容詞もありません。売り込んでいるのは状況そのものです。
ログラインとキャッチコピー、あらすじの違い
ログライン、キャッチコピー、あらすじ(シノプシス)は、どれも物語を要約したものですが、読む相手が違います。ログラインは業界の読み手に「どんな物語か」を伝え、キャッチコピーは観客の興味をかき立て、あらすじは結末まで含めて筋書きのすべてを伝えます。
| 種類 | 長さ | 読む人 | 書くこと |
|---|---|---|---|
| ログライン | 1〜2文 | プロデューサー、コンクール、共同制作者 | 主人公、目標、障害、賭け金 |
| キャッチコピー | ひとこと | 観客(ポスター、予告編) | 雰囲気をにおわせ、興味を引く。筋は説明しない |
| あらすじ(シノプシス) | 半ページ〜数ページ | 審査員、プロデューサー | 主な転換点を現在形で。結末も書く |
たとえば『The Locked Room』のキャッチコピーなら、「15階。見知らぬ3人。やけにうるさい時計がひとつ。」のようになります。物語をシーンごとに文章で語るトリートメントは、さらに先へ進んだものです。どの長い資料もログラインを広げたものなので、ログラインがいちばん先に来ます。あらすじの書き方はシノプシスのガイドで説明しています。
ログラインの型に当てはめた例
型はあくまで出発点で、完成した文ではありません。上の型に当てはめると、たとえばこうなります。
6年前に死んだ父親からの現金を持って青年が現れたことで、人に心を許さない食堂の女主人が、金を取り戻そうとする者たちに阻まれながらも、ただ1つの居場所を失う前に、青年をかくまい通そうとする。
ここから、絵を変えない言葉をすべて削っていきます。日本語のログラインは、「〜が、〜する話」と最後を体言や「話」で締めると、口に出したときに分かりやすくなります。
ログラインの長さはどのくらい?
1文、長くても2文です。日本語ならおよそ60〜100字、ひと息で言える長さが目安です。2文を超えるなら、あらすじに入れるべき筋書きまで背負いこんでいます。
ログラインを書くタイミング
プロットを作る前に、企画の試験として書き、稿を重ねるたびに書き直してください。最初のログラインは物語があるかどうかを教えてくれ、最後のログラインは、実際に何を書いたのかを読み手に伝えます。稿ごとにログラインが変わり続けるなら、物語がまだ固まっていないということです。
ログラインの直し方:直す前と直したあと
- あいまいすぎる:「見知らぬ人が現れ、ある女性の人生が永遠に変わる」。人物も、目標も、失うものもありません。
- 筋書きを詰めこみすぎ:「食堂の女主人が、死を偽装した父を持つ青年と出会い、2人でモーテルへ行き、組織に見つかり、そして……」。これはあらすじで、ログラインではありません。
- うまくいっている:「人に心を許さない食堂の女主人が、青年と死者の金を、両方を狙う者たちからかくまう。失敗すれば、ただ1つの居場所を失う」。人物1人、目標1つ、代償1つです。
有名な人物でないかぎり、人物名は入れないでください。「人に心を許さない食堂の女主人」という説明のほうが、聞いたことのない名前よりずっと多くを伝えます。
ログラインでよくある失敗
- 物語ではなくテーマを書いてしまう:「喪失と許しについての映画」では、読み手は何も思い浮かべられません。
- 受け身の主人公:反応するばかりで、何も追いかけない主人公。
- サブプロットを全部並べる:はっきりした1文は、詰めこんだ3文に勝ちます。
- 売りを隠す:意外な仕掛けこそが読む理由なら、ログラインに入れてください。
- 自分の作品を説明せず、ほかの映画と比べる:「〇〇meets△△」のような比較は、売り込みの場でログラインのあとに使うものです。
ログラインの試し方
見知らぬ人がくり返して言え、映画を思い浮かべられるなら、そのログラインは働いています。その上に何かを組み立てる前に、4つの点検をしてみてください。
- 絵の点検:聞いた人がポスターや予告編の1場面を思い浮かべられるか。浮かばないなら、目標か障害が抽象的すぎます。
- 動詞の点検:主人公の目標は撮影できる行動か。「折り合いをつける」は不合格、「弟を家に連れて帰る」は合格です。
- 敵の点検:積極的に押し返してくる人や力があり、それがだんだん強くなるか。
- なぜ今かの点検:きっかけとなる出来事は、なぜこの物語が去年ではなく今日始まるのかを説明しているか。
1つでも不合格なら、文だけでなく物語を直してください。ログラインの目標があいまいなら、ほぼ必ず、本文の第二幕もあいまいになっています。
ログラインで構成を点検する
ログラインができたら、その各部分が物語の形に重なります。きっかけとなる出来事は触媒、目標は第二幕の中身、障害はそこでの事態、賭け金はクライマックスを決めます。ログラインを転換点へ広げる方法は箱書きとビートシートのガイドで説明しています。
Scenaloomでログラインを書く
Scenaloomの「世界観」は、プロジェクトごとのストーリーバイブルで、「中心テーマ」や自分で作るカスタムの項目と並んで、ログライン専用の項目があります。Scenaloom AIに手伝いを頼むと、AIはストーリーバイブルを読んだうえで提案するので、当て推量ではなく、あなたのログラインから話が始まります。くわしくは世界観とナレッジファイルを読むか、プロジェクトを始めてみてください。
自分の物語で型を試してみたいときは、無料のログライン作成ツールが、6つの短い答えから3通りのログラインを作ります。
よくある質問
ログラインとは何ですか?
映画やドラマの物語を1〜2文で説明したもので、主人公、目標、主な障害、失うものを伝えます。プロデューサー、コンクールの審査員、脚本の読み手は、ログラインを見て脚本を読むかどうかを決めます。観客向けの宣伝文句であるキャッチコピーとは違い、物語そのものを説明します。
ログラインは何文字くらいが目安ですか?
日本語なら1文で60〜100字ほど、長くても2文が目安です。主人公、目標、障害、失うものが入っていれば、短いほど良いログラインです。2文を超えるなら、中心の対立が2つ以上あるか、必要のないサブプロットまで書いている可能性があります。
ログラインに登場人物の名前は入れるべきですか?
ふつうは入れません。「引退した灯台守」のような説明のほうが、読み手が聞いたことのない名前より多くを伝えます。実在の人物を描く伝記もの、原作で有名な人物、タイトルが人物名の場合は、名前を入れてかまいません。
ログラインとあらすじの違いは何ですか?
ログラインは物語を1〜2文に縮めたもので、どんな話かを伝えます。あらすじ(シノプシス)は半ページから数ページの文章で、主な転換点を順に追い、結末まで書きます。ログラインで企画を試し、それを広げたものがあらすじ、さらに広げたものがプロットや箱書きです。
連続ドラマにもログラインは必要ですか?
必要です。シリーズのログラインは、話数を重ねても物語を生み続ける番組の「エンジン」を説明し、第1話のログラインはその回の物語を説明します。多くの書き手は企画書に両方を入れます。番組全体の1文と、第1話の1文です。