
脚本の添削や講評とは、書き上げたシナリオを第三者が読み、良いところと問題点を指摘することです。映画やドラマの業界では、プロの読み手がプロデューサーや制作会社のために書く短い報告書があり、英語圏ではこれを「カバレッジ」と呼びます。ログライン、あらすじ、長所と短所についてのコメント、そして「見送り」「検討」「推薦」の判定が入っていて、忙しい決定権者が全ページを読まなくても脚本を判断できるようにするためのものです。
このページでは、講評に何が書かれるのか、スクリプトドクターは読み手とどう違うのか、そして書こうとした物語を見失わずに意見を伝え、受け取る方法を説明します。まだ初稿を書き終えていないなら、先に脚本の書き方を読んでください。
脚本の講評(カバレッジ)とは
講評は、門番の役目を果たす道具です。制作会社、事務所、コンクールには、決定権者が読みきれないほど多くの脚本が届きます。そこでまず読み手が読み、講評を書きます。良い講評があれば、その脚本に一晩かけて全部読む価値があるかどうかを、数分で判断できます。日本のシナリオコンクールで最初に応募作を読む「下読み」も、これに近い役割です。
書き手が、脚本を外に出す前にプロの目で読んでもらうために、添削や講評のサービスを利用することもあります。形式は同じですが、買い手のためではなく書き手のために書かれる点が違います。シナリオ講座の添削も、この書き手のための講評にあたります。
講評に書かれること
形式は会社によって違いますが、多くの講評には同じ項目が入っています。
- 基本情報:タイトル、作者、ジャンル、枚数、舞台、時代。
- ログライン:物語を1〜2文で。読み手がこれを書くのに苦労するなら、それ自体がすでに1つの指摘です。ログラインのガイドもご覧ください。
- あらすじ:1段落から2ページほどの、筋書きの中立的な要約。書き方はシノプシスのガイドで説明しています。
- コメント:企画の芯、構成、人物、セリフ、テンポ、市場性についての読み手の評価。たいてい1ページほどです。
- 評価表:各項目を「優」「良」「可」「不可」などで評価したもの。
- 脚本についての判定。書き手についての判定が別に付くこともあります。
見送り・検討・推薦
判定は、多くの人が最初に読む部分です。「見送り(パス)」は、その会社がこの脚本を進めるべきではないという意味で、ほとんどの脚本がこの判定になります。「検討(コンシダー)」は、はっきりした長所があり、留保つきでもよく見る価値があるという意味です。「推薦(リコメンド)」は、会社がこの脚本を動かすべきだと読み手が考えているという意味で、読み手自身の判断が問われるため、めったに出されません。脚本は見送りでも、書き手は検討、ということもあります。この企画は合わないけれど、書く力はあるというしるしです。
講評の例
当サイトのシナリオ・ミュージアムにあるLast Callを長編に膨らませたと想定した、短い講評の例です。本物の講評は2〜5ページになりますが、大切なのは形です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| タイトル | Last Call |
| ジャンル | 犯罪ドラマ |
| 長さ | 104ページ |
| ログライン | 6年前に死んだはずの父親からの現金の袋を持って、ずぶぬれの青年が深夜の食堂に現れる。人に心を許さない女主人は、青年を守るために自分の過去をどこまで賭けるのかを決めなければならない。 |
| 企画の芯 | 良 |
| 構成 | 可 |
| 人物 | 優 |
| セリフ | 良 |
| 判定 | 検討 |
コメント:冒頭は強いフックになっていて、女主人のマーラは個性のある主人公だ。ただし第二幕では、ミッドポイントの真相が明かされる前に、同じ脅威が3回くり返される。モーテルとガレージのシークエンスを1つにまとめれば、ミッドポイントを10ページ前に出せるだろう。青年ジョナスには、生きのびること以外の自分自身の欲求が必要だ。外に出す前に、中盤を中心とした改稿をすすめる。
評価表はひと目で判定を伝え、コメントはその理由を説明します。推薦はめったに出ず、出すときは読み手が自分の名前でその脚本を後押しすることになります。
スクリプトドクターの仕事
スクリプトドクターは、脚本の特定の問題を直すために呼ばれる書き手です。中盤のたるみ、平板なセリフ、観客が応援したくならない主人公などを、たいていは企画がすでに動き出してから直します。読み手が診断するのに対し、スクリプトドクターは治療します。シーンを書き直し、人物を研ぎ、構成の問題を解決しますが、クレジットに名前が出ないことも少なくありません。
脚本コンサルタントは、その中間にいます。脚本全体を読み、ときには何稿にもわたってくわしい意見を出しますが、書き直しは書き手に任せます。日本の現場では、プロデューサーや監督との「本打ち」(脚本の打ち合わせ)で意見が出され、脚本家が稿を重ねていくのが一般的です。
脚本の添削で意見を伝える方法
役に立つ意見は、直し方ではなく、読んだときの体験を伝えます。「コインランドリーの場面のあと、陽子が何を求めているのか分からなくなった」は書き手の助けになりますが、「コインランドリーの場面を削って」は、違う問題を解決してしまうかもしれません。次のような習慣が役に立ちます。
- うまくいっているところから、具体的に伝えます。書き手は、何を守ればいいかを知る必要があります。
- 大きな意見から先に伝えます。セリフや誤字より前に、企画の芯、構成、主人公について。
- ページを示します。「第二幕で」より「40ページあたりで」のほうが動きやすくなります。
- 確信がないところは質問にします。「結末はわざとあいまいにしていますか?」は会話の糸口になります。
- 自分なら書いたであろう脚本ではなく、その書き手が書こうとしている脚本について意見を言います。
講評や添削の受け止め方
意見を受け取るのも技術の1つです。いちばん良い反応は、たいていその意見が何から生まれたのかに興味を持つことで、「意見の裏にある意見」と呼ばれます。あるシーンが長すぎると言う読み手は、本当はそのシーンの転換が遅すぎて退屈しているのかもしれません。転換を変えれば、長さは問題でなくなることがあります。
- すべての意見を、返事をせずに一度読み、1日置きます。
- 分類します。何人もの読み手が同じことを言っている意見、自分でもすでに不安に思っていたことと重なる意見、脚本を別の作品に変えてしまう意見。
- 受け入れる意見それぞれについて、その裏にある原因を見つけ、症状ではなく原因を直します。
- 変更は新しい稿で行い、前の稿は見比べられるように残しておきます。
- 外に出す前に、新しい稿を通して読みます。
AIによる脚本の添削とその限界
今はAIのツールが原稿を読み、構成、賭け金、人物の変化、テンポについて、講評のような意見を数分で出せるようになりました。人に何時間も使ってもらう前の、すばやい最初の点検として役に立ちます。けれども、市場や会社のラインナップ、その脚本が人の心を動かすかどうかについての、プロの読み手の判断のかわりにはなりませんし、人による講評でもありません。問うべき問いを見つけるために使い、答えは自分で決めてください。
Scenaloomで原稿の講評を受ける
Scenaloomの「スクリプトドクター」のアドバイザーは、原稿のいちばん大きな構成と人物の問題、つまり因果、賭け金、対立、盛り上がり、変化に的をしぼって意見を出し、あなたのシーンに基づいた焦点の合った改稿を提案します。「スクリプトドクターを実行」を使うと、エピソードの構成を読み、シーンごとの意見と、優先度順に並べた問題点を示します。これはAIによる読みで、プロの人間による講評ではありません。提案された変更は、あなたが適用するまで原稿に反映されません。くわしくはAI執筆アシスタントをご覧ください。人からの意見は、コメントとバージョン履歴で集められます。
よくある質問
脚本の講評(カバレッジ)とは何ですか?
脚本の読み手が、プロデューサー、事務所、制作会社、コンクールのために、脚本を要約して評価する報告書です。たいていログライン、あらすじ、企画の芯・構成・人物・セリフについてのコメント、評価表、そして見送り・検討・推薦の判定が入っています。書き手が応募の前に意見をもらうために依頼することもあります。
見送り・検討・推薦はそれぞれどういう意味ですか?
読み手の判定です。見送りは、その会社がこの脚本を進めるべきではないという意味で、いちばん多い結果です。検討は、はっきりした長所があり、留保つきでもよく見る価値があるという意味です。推薦は、会社が動くべきだと読み手が考えているという意味で、もっともまれな判定です。脚本とは別に、書き手を評価することもあります。
スクリプトドクターとは何ですか?
セリフ、テンポ、人物、構成など、脚本のうまくいっていない部分を書き直すために雇われる脚本家です。企画の後半や撮影の前に呼ばれることが多くあります。評価するだけの読み手と違い、スクリプトドクターは実際に原稿を直し、その仕事はクレジットに出ないことも少なくありません。
AIの脚本添削は使う価値がありますか?
人に原稿を見せる前の、すばやく手軽な最初の点検としては役に立ちます。構成の問題、あいまいな賭け金、平板なキャラクターアークを洗い出せます。ただし、市場に合うかどうかのプロの判断や、プロデューサーの好みのかわりにはなりません。意見は調べるべき問いとして受け取り、どれが物語のためになるかは自分で決めてください。
納得できない講評にはどう向き合えばいいですか?
意見の裏にある意見を探してください。示された直し方が間違っていても、読み手はその場面で、混乱、退屈、違和感といった本物の何かを感じています。その反応の原因を見つけ、自分のやり方で解決します。何人もの読み手が同じ場所を指摘するなら、提案された直し方をすべて退けるとしても、その場所は真剣に見直すべきです。