
短編映画の脚本は、アイデアをひとつに絞り、ロケ地を1〜3か所、登場人物を2〜3人に抑えて書くと、撮りきれる作品になります。長さの目安は、日本の200字詰め原稿用紙(ペラ)1枚、またはハリウッド形式の1ページがおよそ1分です。10分の短編ならペラ10枚前後を目指します。
短編は長編を縮めたものではありません。ひとつの瞬間、ひとつの関係、ひとつの決断を深く掘る形式です。ここでは尺の決め方、アイデアの絞り方、構成、書く手順を、自主映画や学生映画で実際に撮ることを前提に説明します。
短編映画の脚本は何枚にするか
まず完成した映画の尺を決め、そこから脚本の枚数を逆算します。セリフの多い会話劇は1枚あたりの尺が短く、動きの多い場面やセリフのない場面は長くなりがちなので、書き上げたら声に出して読み、ストップウォッチで測りましょう。
| 完成尺 | ペラの目安 | 向いている内容 |
|---|---|---|
| 3〜5分 | 3〜5枚 | ワンアイデア、オチのある話、映像中心の作品 |
| 10分前後 | 10枚前後 | 2〜3人の関係が変わる話。映画祭の短編部門に多い長さ |
| 15〜20分 | 15〜20枚 | 小さな事件と、その後までを描く話 |
| 30分前後 | 30枚前後 | 短編としては長め。人物や場所が増え、撮影の負担も増える |
映画祭や学校の課題には、上限の分数が決まっていることがよくあります。脚本を書く前に応募要項を確かめ、上限より少し短めを目標にしておくと、編集で困りません。
アイデアはひとつに絞る
短編映画のアイデアは、一文で言えるものにします。「誰が、何を求めて、何に阻まれるか」が一行で言えないなら、そのアイデアは短編には大きすぎるか、まだぼんやりしています。
- ひとつの状況:閉店後のコインランドリーで、他人の洗濯物に手紙を見つける。
- ひとつの関係:卒業式の前の晩、ずっと口をきいていなかった兄弟が同じ部屋に泊まる。
- ひとつの決断:拾った財布を、交番に届けるか、持ち主の家まで届けに行くか。
アイデアが見つからないときは短編映画のネタに、撮影条件別の40の案をまとめています。ログラインの作り方はログラインの解説をご覧ください。
ロケ地と登場人物を減らす
自主映画では、ロケ地が1か所増えるたびに、許可、移動、機材の運び込み、照明の組み直しが増えます。登場人物がひとり増えるたびに、役者の日程を合わせる手間が増えます。短編の脚本は、書く段階で撮影の負担を減らしておくのがいちばんの節約です。
- ロケ地は1〜3か所に。自宅、友人の店、大学の教室など、確実に借りられる場所から考えます。
- 主要人物は2〜3人に。名前とセリフのある人物が増えるほど、一人ひとりを描く時間がなくなります。
- 夜と雨は慎重に。夜の屋外は照明が、雨降らしは機材と人手が必要です。
- エキストラや群衆を避ける。人通りの多い駅前より、閉店後の店のほうがずっと撮りやすいです。
- 車の走行シーン、子ども、動物は、撮影の難しさを知ったうえで使います。
短編映画の構成
短編でも、始まり、展開、結末の流れは必要です。ただし三幕構成のように幕を均等に配分する必要はありません。10分の短編なら、最初の1分で状況と人物の欲しいものを見せ、中盤で障害を強め、最後の1〜2分で変化を見せる、くらいの配分が目安です。
日本の短編では、起承転結で組む方法もよく合います。とくに「転」の意外な一手で印象を残す作品は、短い尺と相性がよい形です。結末は説明で締めず、最初の場面に出てきた物や台詞が、最後に違う意味を持つように置くと、短い作品でも余韻が残ります。構成の型は三幕構成と起承転結でも紹介しています。
短編映画の脚本を書く手順
- 尺を決める。完成時の分数を決め、ペラの枚数を逆算します。
- 一行で言う。主人公、目的、障害をログラインにまとめます。
- 撮れる場所と人を書き出す。借りられる場所、出てもらえる人、使える小道具から逆に考えるのも、自主映画ではよい方法です。
- 箱書きを作る。シーンを1行ずつ並べ、各シーンで何が変わるかを書きます。10分の短編なら5〜8シーン程度が目安です。
- 最後の場面を先に決める。結末の映像が決まると、冒頭に何を置くべきかが見えてきます。
- 初稿を一気に書く。柱・ト書き・セリフの書式で、まず最後まで書き切ります。
- 声に出して読み、尺を測る。長ければシーンをまとめ、セリフを削ります。
- 撮影の目で読み直す。この場所は本当に借りられるか、この人数で撮れるか。撮れない場面は書き直します。
短編映画の脚本の例
このページのために書き下ろした、3分ほどの短編の冒頭です。場所はひとつ、人物は二人。撮影は一晩で済みます。
○ コインランドリー「ふくろう」(深夜) 客のいない店内。乾燥機が一台だけ回っている。 大学生の葵(20)、ベンチでレポートを書いている。 乾燥機が止まる。葵、顔を上げる。 持ち主は来ない。 × × × 時計は2時を回っている。 葵、乾燥機を開ける。 男物のワイシャツが一枚。胸ポケットに、 四つ折りの便箋。 葵、便箋を開きかけて、やめる。 入口の自動ドアが開く。 スーツ姿の男、小野寺(50)、息を切らして入ってくる。 小野寺「すみません、それ……」 葵「(便箋を差し出して)ポケットに入ってました」 小野寺「読みました?」 葵「読んでません」 小野寺、便箋を受け取り、少し迷ってから 葵に差し戻す。 小野寺「……読んでもらえますか。声に出して」
最初の数行で場所と人物と状況が分かり、ワイシャツと便箋という小道具ひとつで物語が動きます。最後の台詞で、観客は「この手紙は何なのか」「なぜ他人に読ませるのか」を知りたくなります。短編では、こうした問いをひとつだけ立てて、最後に答えるのが基本です。
短編映画の脚本を読んでみる
短編の書き方を学ぶいちばんの近道は、短い脚本を読みながら、短編映画をたくさん観ることです。Scenaloomの脚本ミュージアムでは、コールドオープン、カットバック、サブテキストなど、ひとつの技法を軸にした1ページの書き下ろし脚本を6本読めます。どれも自分のプロジェクトとして開いて、書き換えて練習できます(脚本は英語です)。止まったエレベーターの中だけで進むThe Locked Roomは、場所をひとつに絞った短編の例です。
日本では、ぴあフィルムフェスティバル(PFF)や、ショートショート フィルムフェスティバル & アジア(SSFF & ASIA)などが自主映画や短編の発表の場として知られています。受賞作や入選作を観ると、短い尺でどこまで描けるかの感覚がつかめます。
短編映画の脚本でよくある失敗
- 長編の第一幕だけを書いてしまう。続きがあるように見える短編は、未完成に見えます。
- 人物の紹介に時間をかけすぎる。最初の1分で、主人公の欲しいものを見せましょう。
- 撮れない場面を書く。予算も人手もない自主映画で、爆発や大群衆は撮れません。
- 最後にナレーションやモノローグで意味を説明する。結末は映像で見せます。
- 尺を測らずに撮影に入る。現場で削るより、脚本の段階で削るほうがずっと楽です。
Scenaloomで短編映画の脚本を書く
Scenaloomの脚本エディターとPDFのエクスポートは同じレイアウトの仕組みを使っているので、画面の1ページがそのままPDFの1ページになります。1ページおよそ1分の目安で尺を見積もるのに便利です。日本語の脚本にはアジア形式を使え、シーン番号と各シーンの登場人物が自動で並びます。
ロケ地とシーン一覧は脚本の柱から作られるので、撮影の計画を立てる前に場所の数を数えるのも簡単です。ショットリストはCSVでエクスポートでき、ExcelやGoogleスプレッドシートで開けます。無料プランはカードの登録なしで始められます。無料で書きはじめる
よくある質問
短編映画の脚本は何枚くらいですか?
ペラ(200字詰め原稿用紙)1枚、またはハリウッド形式の1ページが、およそ1分の目安です。10分の短編ならペラ10枚前後になります。会話の多い脚本は1枚が短く、動きの多い脚本は長くなるので、声に出して読んで尺を測りましょう。
お金をかけずに短編映画を作るにはどうすればいいですか?
脚本の段階で、借りられる場所、出てもらえる人、手元にある小道具から物語を考えるのがいちばんです。ロケ地は1〜3か所、人物は2〜3人に絞り、夜の屋外、雨、群衆、車の走行シーンなど手間のかかる場面を避けると、少人数でも撮りきれます。
よい短編映画のアイデアとは何ですか?
一文で言えて、ひとつの場所、少ない人物で成り立ち、最後に何かが変わるアイデアです。大きな物語の一部ではなく、ひとつの瞬間や決断を深く描けるものが短編に向いています。
短編映画にも三幕構成は必要ですか?
厳密な三幕構成は必要ありませんが、始まり、展開、結末の流れは必要です。最初に状況と欲しいものを見せ、中盤で障害を強め、最後に変化を見せれば、短い尺でも物語として成り立ちます。起承転結で組むのもよい方法です。
短編映画の脚本はどこで読めますか?
Scenaloomの脚本ミュージアムで、ひとつの技法を軸にした1ページの書き下ろし脚本を6本読めます(英語)。映画祭の受賞作を観たり、シナリオ雑誌に掲載された脚本を読んだりするのも勉強になります。