
Fountain(ファウンテン)は、脚本をプレーンテキストで書くための公開された書式です。柱は大文字のINT.やEXT.で始める、人物名は大文字だけの行にする、場面転換はTO:で終える、といったいくつかの決まりに沿ってテキストエディターで書けば、脚本ソフトがそのファイルを読み込んで、脚本の紙面に組んでくれます。拡張子は.fountainです。
Fountainは2012年に、脚本家のジョン・オーガストと映像作家のスチュ・マシュウィッツが、それ以前の「Screenplay Markdown」という考え方をもとに作りました。そのため、古いファイルには.spmdという拡張子も見られます。仕様が公開されているので、どのアプリでも読み書きできます。もともと英語のハリウッド形式のために作られた書式なので、日本語で書くときはいくつか気をつける点があります。
Fountainで脚本を書く利点
- テキストは長持ちします。.fountainファイルは、どの端末のどのテキストエディターでも、特別なソフトなしで開けます。
- スマホのメモ帳、メールの下書き、コードエディターなど、文字を打てる場所ならどこでも書けます。
- 変更が行ごとに見えるので、Gitのようなバージョン管理や、差分の比較に向いています。
- 多くの脚本ソフトが読み込みと書き出しに対応しているので、アプリ間で受け渡す共通の形式として使えます。
その代わり、Fountainは書くための形式で、紙面のレイアウトは持っていません。ページの区切りや(MORE)(CONT'D)は、ファイルを組むソフトが計算します。
基本の書き方
Fountainは、行の見た目から要素を見分けます。英語の脚本の書式をそのまま写したような決まりです。
柱(シーン見出し)
前に空行があり、INT、EXT、EST、INT./EXT、I/Eのどれかで始まる行が柱になります。日本語の柱も「INT. 港町図書館・閲覧室 - 夕」のように、頭にINT.かEXT.を付けて書くと確実に柱として読み込まれます。
ト書き
ほかのどの要素にも当てはまらない段落は、すべてト書きになります。段落のあいだは空行で区切ります。
人物名とセリフ
前に空行があり、すぐ下に文字が続く大文字だけの行が人物名で、その下の行がセリフです。日本語の名前には大文字がないので、そのままではト書きとして読まれてしまいます。人物名の行の頭に@を付けて「@理沙」と書いてください。(V.O.)や(O.S.)のような補足は名前のあとに付けます。
括弧書き
セリフの中で、人物名の下やセリフの行のあいだに置いた括弧の行が括弧書きになります。日本語の脚本でも、Fountainでは全角の()ではなく半角の()で書くと確実です。
場面転換
前後に空行があり、TO:で終わる大文字の行が場面転換になります(CUT TO:)。日本語の「O・L」のようにTO:で終わらない転換は、頭に>を付けます。
INT. 灯台・灯室 - 夜 灯りが回る。千尋、光と光のあいだの秒数を指で数えている。 @千尋 (小声で) 九つ。十のはずなのに。 > O・L EXT. 崖の道 - 夜
この例は、打ったままで有効なFountainです。柱はINT.とEXT.、人物名は@、転換は>で見分けられています。脚本ソフトで組むと、次のような紙面になります。
INT. 灯台・灯室 - 夜 灯りが回る。千尋、光と光のあいだの秒数を指で数えている。 @千尋 (小声で) 九つ。十のはずなのに。 > O・L EXT. 崖の道 - 夜
強制記号
行が別の要素と取り違えられそうなときは、行頭に一文字付けて、要素を指定できます。
- ピリオド(.):INTやEXTで始まらない柱を強制します(.THE VOIDなど)。英字で始まる柱向けの記号なので、日本語の柱にはINT.かEXT.を付けるほうが安全です。
- アットマーク(@):人物名を強制します。日本語の名前や、McKAYのように小文字を含む名前に使います。
- 感嘆符(!):人物名ではない大文字の行を、ト書きとして扱わせます(!BANGなど)。
- 大なり記号(>):TO:で終わらない場面転換を強制します(>FADE OUT.など)。
中央寄せ、強調、改ページ
- 中央寄せは>と<ではさみます:>終<
- 強調はMarkdownと同じで、*斜体*、**太字**、_下線_です。
- =を3つ以上(===)だけの行で、改ページを強制します。
- 同時セリフは、二人目の人物名のあとにキャレット(^)を付けます(@健二 ^)。くわしくは同時に話す台詞のガイドへ。
- 歌詞は行頭にチルダ(~)を付けます。
メモ、見出し、表紙
Fountainには、印刷される脚本以外の情報も書き込めます。
- メモは二重の角括弧で、[[このように]]書きます。組まれた紙面には出ません。
- /*と*/のあいだは「ボーンヤード」で、ファイルには残りますが出力されません。没にしたシーンの置き場所に便利です。
- #で始まる行はセクション(幕や章)、=で始まる行はそのシーンのあらすじです。どちらも整理用で、印刷されません。箱書きを脚本と同じファイルで書けます。
- 表紙は、ファイルの先頭にTitle:、Credit:、Author:、Draft date:のような「項目: 内容」の行で書きます。
Title: 九つめの光 Credit: 脚本 Author: 岡田千尋 # 起 = 千尋が、灯台の光がおかしいことに気づく。 INT. 灯台・灯室 - 夜
日本の書式で書きたいときは
Fountainは英語のハリウッド形式を前提にした書式で、○の柱や名前「セリフ」といった日本の伝統的な書式は表せません。Fountainで書いた脚本は、読み込んだソフトの中でハリウッド形式やアジア形式に組まれます。原稿用紙の書式で提出したい場合は、Fountainで下書きをしてから、Wordなどで日本の書式に整える流れになります。日本の書式そのものは脚本テンプレートで紹介しています。
FountainとFinal Draftのファイルの違い
FountainとFinal Draft(.fdx)は役割が違います。.fdxは書式の設定ごと文書を保存するファイルで、.fountainは言葉と要素の種類だけを保存するファイルです。下書きや保管はFountainで行い、制作会社とは.fdxでやりとりする書き手も多くいます。ソフト選びの考え方は脚本ソフトの選び方をご覧ください。
Scenaloomで書く
ScenaloomはFountainのファイル(.fountainと.spmd)を、Final Draft(.fdx)やPDFと同じように読み込めます。書き出しはFountainのほか、PDF、Final Draft、Word、テキスト、Markdownに対応しています。Final DraftとFountainのファイルは常にハリウッド形式で書き出される点に注意してください。新しいプロジェクトの画面に脚本を貼り付けて始めることもできます。くわしくは読み込みと書き出しをご覧ください。脚本を書きはじめる
何もインストールせずにFountainのファイルをPDFやFinal Draft形式にしたいときは、無料の脚本フォーマッターで開けます。
よくある質問
Fountainファイルとは何ですか?
公開されたFountainの書式で書かれた、プレーンテキストの脚本ファイルです。拡張子はふつう.fountainで、古いものには.spmdもあります。どのテキストエディターでも開け、脚本ソフトで読み込むと脚本の紙面に組まれます。
Fountainで日本語の脚本は書けますか?
書けます。ただし人物名は大文字で見分ける決まりなので、日本語の名前には頭に@を付けます。柱はINT.かEXT.で始め、括弧書きは半角の()で書くと確実です。○の柱や名前「セリフ」といった日本の伝統的な書式そのものは表せません。
.fountainファイルはどうやって開きますか?
メモ帳などのテキストエディターで、そのまま文字として開けます。脚本の紙面として見たいときは、Fountainに対応したソフトで開くか読み込みます。Scenaloomなら、.fountainと.spmdのファイルをブラウザで脚本のページとして表示できます。
Fountainは無料で使えますか?
はい。Fountainは仕様が公開された書式で、だれでもどのテキストエディターでも書けますし、どのアプリも対応できます。書式そのものに使用料はかかりません。組むためのソフトには、それぞれ料金があることがあります。
FountainをFinal Draft形式に変換できますか?
できます。Fountainを読み込んで.fdxを書き出せるソフトを使います。Scenaloomなら、.fountainか.spmdのファイルを読み込み、紙面を確認してから、Final Draft(.fdx)、PDF、Word、テキストで書き出せます。