リネンの机に置かれた脚本の原稿と鉛筆、クリップ

シナリオとは、映画やテレビドラマ、アニメ、ゲームなどを作るために書かれる脚本のことで、物語を柱(場所と時間)、ト書き(動きや様子)、セリフで書いた設計図です。観客が見て聞けることだけを、決まった書式で書くのが特徴です。もとは英語の「scenario(筋書き)」で、ビジネスでは「想定される筋書き」の意味でも使われますが、このページでは映像作品のシナリオについて説明します。

シナリオの定義に続いて、脚本・台本・戯曲・小説との違い、コンクールに出す応募原稿と撮影に使う決定稿の違い、長さの目安、誰がシナリオを読むのかを説明します。書き始める準備ができたら、脚本の書き方へ進んでください。

シナリオを書くとはどういうことか

シナリオを書くとは、撮影されるための物語を書くことです。シナリオライター(脚本家)は、何が、どんな順番で起き、誰が何を言い、各シーンで何が画面に映るかを決めます。けれども、それをどう撮り、どう照らし、どう演じるかは決めません。それは監督、スタッフ、俳優の仕事です。

この限界が、シナリオという技術の全体を形づくっています。顔に表れたりセリフになったりしないかぎり、人物の考えを書くことはできません。画面の上の何かに変わらないかぎり、過去の事情を長々と説明することもできません。観客が残りのすべてを読み取れる瞬間を選ぶこと、それがシナリオの仕事です。

シナリオはどんな見た目か

日本のシナリオは、ごく少ない要素でできています。○で始まる柱、数文字下げて書くト書き、人物名に続けて「」で書くセリフ、そして(M)や(N)、× × ×といった記号です。伝統的には200字詰め(ペラ)や400字詰めの原稿用紙に縦書きで書き、どのシナリオも同じ見た目になるようにします。オリジナルの短い例です。

○漁港・防波堤(早朝)
   霧。小さな漁船が岸壁にこつんと当たる。
   松尾キヨ(74)、結び目を知りつくした手でもやいをほどく。
   孫の陽太(12)、息を切らして石段を駆け下りてくる。
陽太「起こしてくれるって言ったじゃん」
キヨ「待っててやるって言ったんだよ」
   キヨ、陽太に綱を渡す。

わずか数行で、場所、時間、2人の人物、2人のあいだの歴史、そして1つの決断が伝わります。この無駄のなさのために書式があるのです。ハリウッド形式では、柱を「EXT. HARBOR WALL - DAWN」のように英語の大文字で書き、セリフを人物名の下に中央寄せで組むなど、見た目が大きく違います。要素ごとの字下げは脚本の書式ガイドにまとめています。

シナリオ・脚本・台本・戯曲の違い

シナリオと脚本は、ほぼ同じ意味で使われます。映画やドラマの世界では「脚本」がよく使われ、「シナリオ」はやや広く、アニメやゲームの物語の原稿も指します。台本は、それを実際の撮影や上演のために印刷・製本したものを指すことが多く、現場で俳優やスタッフが手にするのは「台本」です。

呼び方主な意味特徴
シナリオ映像作品やゲームなどの脚本柱・ト書き・セリフで書く。業界では脚本とほぼ同じ意味
脚本映画、ドラマ、舞台の筋書きとセリフを書いたものもっとも一般的な呼び方。書いた人は脚本家
台本撮影や上演のために製本された脚本撮影台本、上演台本など。現場での呼び方
戯曲舞台のために書かれた脚本文学作品として読まれることも多い。場で区切り、セリフ中心
テレビドラマの脚本連続ドラマや単発ドラマ用の脚本書き方は映画と同じ。放送枠に合わせた尺と、各話の引きがある
  • 映画のシナリオ:長編や短編の映画のために書かれたもの。
  • ドラマの脚本:テレビの1話分として書かれたもの。書式は同じで、番組に合わせてアバンや引きを作ります。違いはドラマ脚本の書き方で説明しています。
  • 戯曲:劇場で生の舞台として演じられるもの。書式が違い、セリフが中心で、1つの空間で観客の前で上演されます。
  • 小説:読まれるために書かれるもの。小説は人物の頭の中に入れ、何年もの出来事を1文で要約できますが、シナリオは見せることと話させることしかできません。

応募原稿と決定稿の違い

シナリオには、書かれる目的によっていくつかの段階があります。コンクールへの応募や売り込みのために自主的に書く原稿は、読み物として整えたものです。一方、制作が決まったあとは、打ち合わせを重ねて準備稿、決定稿と稿を進め、決定稿が撮影台本として印刷されます。英語圏では、前者をスペック・スクリプト、後者をシューティング・スクリプトと呼びます。

ページの上での主な違いは次のとおりです。

  • シーン番号:応募原稿では付けないか、付けても読みやすさのためだけです。撮影用の台本では番号を固定し、香盤表やスケジュールと結びつけます。ハリウッド形式では、足したシーンは「12A」、削ったシーンは「OMITTED」として番号を動かしません。
  • カメラの指示:応募原稿にはほとんど書きません。撮影用の台本では、監督の意向で細かいカットが加わることがあります。
  • 改訂:撮影用の台本は、変更が入るたびに改訂の印や日付入りの差し替えページで管理されます。応募原稿は1つのきれいな稿です。
  • 読む人:応募原稿を読むのはコンクールの審査員やプロデューサー、撮影用の台本を読むのは俳優とすべての部署です。

シナリオの長さ

日本のシナリオでは、200字詰め原稿用紙(ペラ)1枚がおよそ30秒、400字詰め1枚がおよそ1分が目安といわれます。2時間の映画ならペラ240枚前後、1時間の連続ドラマなら400字詰めで60枚前後がよく挙げられる数字です。ハリウッド形式では1ページがおよそ1分で、長編映画はふつう90〜120ページ、30分のドラマは25〜35ページ、1時間ドラマは45〜65ページほど、短編映画は1ページから30ページほどまでさまざまです。

枚数はおおよその目安で、ストップウォッチではありません。テンポの速いセリフの1枚は、ト書きの詰まった1枚より早く過ぎます。それでも、書式が厳しく決められているのはこのためです。字数や行数を変えてしまうと、1枚が何分にあたるのかが分からなくなります。

シナリオを読む人

シナリオは、撮影されるずっと前から、それぞれ違う問いを持った多くの人に読まれます。

  • プロデューサーや企画担当者:企画として進めるかどうかを判断し、講評を書きます。くわしくは脚本の添削と講評のガイドをご覧ください。
  • 出資者や製作委員会:予算、キャスティングの魅力、市場を見ます。
  • 監督と俳優:その作品をやりたいかどうかを決めます。
  • 制作が決まったあとのすべての部署:助監督はシナリオを分解して香盤表とスケジュールを作り、美術はセットと小道具を、衣装は衣装を読み取ります。

だからこそ、文体よりも分かりやすさが大切です。どの読み手も、自分が探しているものをすぐに見つけられなければなりません。

短いシナリオを読んでみる

シナリオを理解するいちばんの近道は、実際に読むことです。シナリオ・ミュージアムには、1ページのオリジナル脚本が6本あり、それぞれが、いきなり始まる冒頭、カットバック、サブテキスト、ボイスオーバーといった1つの技法を見せています。どれも自分のプロジェクトとして開いて、研究したり書き直したりできます。

Scenaloomでシナリオを書く

Scenaloomは、入力に合わせてシナリオの書式が整う、ブラウザで使える脚本ソフトです。日本語・中国語・韓国語向けのアジア形式では、シーンに番号が付き、そのシーンの登場人物を並べた行が入り、柱は場所と時間帯が先に来ます。英語のハリウッド形式では、Courier Prime 12ポイント、US Letterの用紙、要素ごとの正しい字下げで組まれ、改ページには(MORE)と(CONT'D)が入ります。シーン番号なしで書き始め、撮影用になったら番号を固定して改訂の印を付けることもでき、PDFやFinal Draft(.fdx)に書き出せます。Scenaloomは原稿用紙の形式や縦書きでの出力には対応していないので、コンクールに出すときは書き出してから応募要項の書式に整えてください。無料プランでシナリオを始める(カード登録は不要です)。

よくある質問

シナリオとは簡単にいうと何ですか?

映画やドラマを作るための脚本のことです。柱、ト書き、セリフという決まった形で、観客が見て聞けることだけを書きます。カメラワークや演技は監督と俳優に任されます。2時間の映画なら、200字詰め原稿用紙(ペラ)でおよそ240枚が目安です。

脚本と台本の違いは何ですか?

脚本は、作品の筋書きとセリフを書いた原稿そのものを指します。台本は、それを撮影や上演のために印刷・製本したもので、現場で俳優やスタッフが使うものを指すことが多い言葉です。ただし日常的にはほぼ同じ意味で使われ、厳密に区別しない人も多くいます。

シナリオと脚本は同じものですか?

ほぼ同じ意味です。映画やドラマでは「脚本」と呼ぶことが多く、「シナリオ」はアニメやゲームの物語の原稿も含めて、やや広く使われます。書き方の基本はどちらも同じで、柱、ト書き、セリフで書きます。

決定稿とは何ですか?

制作の打ち合わせを経て、撮影に使うことが決まった最終版の脚本です。初稿から準備稿、決定稿と稿を重ね、決定稿が撮影台本として印刷されて、俳優や各部署に配られます。撮影中に変更が入ることもありますが、その場合も改訂として管理されます。

シナリオを1本書くのにどのくらいかかりますか?

人によって大きく違います。長編の初稿を書き上げるのに数か月、推敲にさらに長くかける人が多い一方、締め切りのあるプロは数週間で初稿を書くこともあります。先にログラインやプロット、箱書きを作っておくと、執筆の時間も書き直しも減らせることが多いです。