鉛筆で描いた人物ラフのキャラクターカードが机に並んでいる

キャラクターアークとは、物語を通して登場人物の内面が変わっていく道筋のことです。物語の終わりで、その人の信じていること、大切にしていること、ふるまいが、始まりとどう違っているかを表します。多くのアークは3つの種類に分けられます。人物が成長するポジティブアーク、転落するネガティブアーク、そして本人は変わらずに周りの世界を変えるフラットアークです。

アークがあるから、筋書きに意味が生まれます。外側の物語は人物にやることを与え、アークは、それをやることでその人が何を失い、どんな人になるのかを見せます。いろいろなことが起きたのに少しも心が動かなかった、と観客が言う映画には、たいていキャラクターの成長、つまり人物の変化が欠けています。

キャラクターアークとは

キャラクターアークは、物語の始まりのその人と、終わりのその人をつなぐ道のりで、筋書きの圧力によって形づくられます。変化は内面で起きるので、脚本では「選択」で見せるしかありません。何かを失うと分かっていても、その人がどう行動するかです。

アークの考え方の多くは、1つの前提に立っています。人物は自分自身や世界について、間違った思い込みを抱えて物語を始めます。書き手はそれを「嘘」「欠点」「傷」などと呼びます。筋書きはその思い込みに圧力をかけ続け、人物は最後に、それを手放すか、大きな代償を払ってしがみつくかを迫られます。

欲求(ウォント)と必要(ニード)

欲求(ウォント)は人物が自覚して追いかけるもの、必要(ニード)は満たされた自分になるために気づくべきこと、変えるべきことです。欲求が筋書きを動かし、必要がアークを動かします。そして2つは、しばしば逆の方向へ引っぱり合います。

  • 欲求:外側にあり、具体的で、目に見えるもの。裁判に勝つ、家を守る、行方不明の妹を見つける。物語に目標を、各シーンに行動を与えます。
  • 必要:内側にあり、たいてい口にされないもの。人を信じることを覚える、喪失を受け入れる、親に認められるための演技をやめる。始めのうち、本人はたいてい気づいていません。
  • ぶつかり合い:強いアークは、物語の終盤で欲求と必要のどちらかを選ばせます。欲求を手に入れて必要を無視した人物の勝利は、むなしいものか、悲劇になります。

キャラクターアークの種類

三幕にわたる3つのキャラクターアークのグラフ。上がっていくポジティブアーク、水平のフラットアーク、下がっていくネガティブアーク
ポジティブ、フラット、ネガティブの3つのアーク。最後のページまでに人物の信念がどれだけ動くか。

ポジティブアーク(成長)

ポジティブアークでは、人物は欠点のある思い込みを抱えて始まり、筋書きに試され、最後にはもっと本当の考えに置きかえます。娯楽映画でいちばんなじみのある形です。自分のことしか考えない人が分け合うことを覚え、臆病な人が勇気を見つけ、ひとりでいたい人が人を受け入れます。『千と千尋の神隠し』で、ふてくされていた千尋が自分の力で働き、人を助けるようになるのも、この形です。

ネガティブアーク(転落)

ネガティブアークでは、人物は始めより悪い状態で終わります。よくある形は3つあります。欲求を追ううちにまっとうな人が堕ちていく「転落」、つらい真実を知り、知ることで何かを失う「幻滅」、真実を差し出されながら嘘にしがみつき、それに滅ぼされる「拒絶」です。山崎豊子の『白い巨塔』で、野心に燃える外科医・財前五郎が頂点へのぼりつめながら破滅していくように、悲劇や多くの犯罪ものはネガティブアークで動いています。

フラットアーク(不変)

フラットアークでは、主人公は最初から真実を持っていて、ほとんど変わりません。そのかわりに、周りの人々と世界を変えていきます。名探偵、師匠役、長く続くシリーズの主人公の多くがフラットアークです。『男はつらいよ』の寅さんは、どの作品でもほとんど変わらないまま、旅先で出会う人たちの人生を少しずつ動かしていきます。変化はちゃんと起きていて、主人公のぶれなさに試される脇役たちの中を通っていくのです。

脇役が自分のアークを持つこともあり、敵役のアークは主人公のアークを映す鏡になることがよくあります。同じ圧力に向き合いながら、違う選択をする2人です。

キャラクターアークの節目を三幕構成に重ねる

キャラクターアークは三幕構成にそのまま重ねられます。第一幕で欠点を示し、第二幕で高まる圧力の中でそれを試し、第三幕で、人物が変わったかどうかを証明する選択を迫ります。

  1. 設定(第一幕):小さく具体的な場面で欠点を実際に見せ、それによってちょっとした損をさせます。
  2. きっかけとなる出来事:筋書きがやってきて、まっすぐ欠点をねらいます。くわしくは物語のきっかけのガイドをご覧ください。
  3. 第一幕の終わり:人物は古い思い込みを抱えたまま、欲求を追うと決めます。
  4. 第二幕の前半:古い思い込みはだいたい通用するか、通用するように見えます。小さな勝利が問題を隠します。
  5. ミッドポイント:発覚や見せかけの勝利が、必要の一端を人物に見せます。
  6. 第二幕の後半:古い思い込みが通用しなくなり、人間関係がきしみ始めます。
  7. どん底:古い生き方が本当の喪失を招き、人物は自分の嘘と向き合わざるをえなくなります。
  8. クライマックス(第三幕):圧力が最大になったところで、変わった人にしかできない選択をします。ネガティブアークなら、変われなかった人にしかできない選択です。
  9. ラストシーン:冒頭の場面と響き合わせ、観客がその差を測れるようにします。

キャラクターアークの例

オリジナルの例で、アークの流れを追ってみます。商店街で亡き父の金物屋を継いだ高木真理子(40)は、何でもひとりでこなします。人に頼るのは、やっていけないと認めることだと信じているからです。欲求は、向かいにできる大型ホームセンターから店を守ること。必要は、人を受け入れることです。

  • 設定:荷物運びを手伝おうかと言う高校生の常連客を「大丈夫」と断り、その直後に釘の箱を床にぶちまけます。
  • きっかけ:ホームセンターの看板が上がり、1か月で売り上げが半分に落ちます。
  • 第一幕の終わり:真理子は、営業時間を延ばし、弟に内緒で借りた融資で戦うと決めます。
  • ミッドポイント:高校生の蓮が、頼まれもしないのに一晩で店の壊れたウェブサイトを作り直し、ネット注文が入り始めます。真理子は感謝しながらも、助けが必要だった自分に腹を立てます。
  • どん底:疲れ切って納品を逃し、いちばん大きな工務店の取引を失います。融資のことも弟に知られてしまいます。
  • クライマックス:店の今後を話し合う商店街の寄り合いで、真理子は立ち上がり、生まれて初めて声に出して「助けてほしい」と頼みます。
  • ラストシーン:蓮と弟が荷物を運び込むあいだ、真理子はレジに立っています。箱が落ちても、誰も慌てません。

原稿の上では、転換は小さくてかまいません。アークは、何を言うか、そしてそれを言うのにどれだけの代償がいるかの中にあります。

○商店街・集会所(夜)
   パイプ椅子が並び、席は半分ほど埋まっている。
   前に立つ真理子(40)、手にしたメモには目を落とさない。
真理子「6年、あの店をひとりでやってきました。みんなには大丈夫って言ってきました」
   間。
真理子「大丈夫じゃないんです。助けてください。頼み方が分からないので……ただ、頼みます」
   沈黙。最後列で、蓮(17)が手を挙げる。
蓮「ホームページは、もうやりました」
   会場に笑いが広がる。真理子も笑う。目元はぬぐわない。

変化のアークと、揺るがないアーク

アークは「誰が変わるのか」で分けると、もっとすっきりします。変化のアークでは主人公が変わります。欠点や間違った思い込みを乗り越える良い方向の変化もあれば、堕ちる、毒される、幻想を失うといった悪い方向の変化もあります。揺るがないアーク(フラットアーク)では、主人公は物語のテーマである真実を最初から持っていて変わらず、圧力の中でそれを守り抜くことで、周りの人や世界を変えます。どちらも試されている以上、どちらも本物のアークです。

  • 良い方向への変化:主人公は間違った思い込みを、より本当の考えと取りかえ、そのことで良くなります。
  • 幻滅:主人公は、心のよりどころだった思い込みを失わせる真実を知り、賢く、そして少し悲しくなって終わります。
  • 転落・堕落:主人公は間違った思い込み、あるいはもっと悪いものを選び、小さくなって終わります。
  • 揺るがない:主人公は変わりません。主人公がいることで、脇役たちと世界が変わります。

キャラクターアークと物語のアークの違い

物語のアーク(ストーリーアーク)は、筋書きの形です。何が、どんな順番で起き、どうクライマックスへ高まっていくか。キャラクターアークは、その出来事を通じた主人公の内面の変化の形です。2つは一緒に組み立てるべきものです。大きな筋の転換はどれも、人物が古い思い込みと新しい考えのどちらで動くかを試す試験になり、クライマックスは、筋書きとキャラクターアークが同じ1つの選択で決着する瞬間になります。

1つの物語に複数のアークを置く

群像劇では何人もの人物がそれぞれのアークを持ち、主人公が1人の物語でも、たいていは大事な脇役にアークがあります。それぞれを別のものにしてください。2人が同じ教訓を学ぶなら、1人にまとめるか、どちらかを変えます。役に立つのは「鏡」の形で、脇役が主人公と同じ選択に向き合い、逆を選ぶことで、主人公の変化の重みを見せます。

強いキャラクターアークの書き方

  • 終わりから始める:最後の場面でその人がどんな人なのかを決め、最初の場面をその正反対に設計します。
  • 欠点を役に立つものにする:何年もその人を守ってきた欠点なら説得力がありますが、喜んで捨てられる欠点には説得力がありません。
  • 会話ではなく行動で試す:自分の成長を説明する人物はカウンセリングのように聞こえます。圧力の中でこれまでと違う選択をする人物は、成長を見せられます。
  • 幕ごとに、同じ試験の違う形を、毎回より高い賭け金で与えます。
  • もう1つの道を脇役に体現させる:主人公が良くも悪くもなりうる姿を見せる誰かを置きます。

アウトラインを作る前に、欲求、必要、欠点、傷をキャラクター設定に書き出しておけば、すべてのシーンをそれに照らして確かめられます。

Scenaloomでアークを組み立てる

Scenaloomのビートボードは「三幕構成」「15ビートシート」「ヒーローズ・ジャーニー」から始められ、各ビートが目標の長さに対するふつうの割合の位置に置かれるので、アークの節目を筋書きのビートと並べて置けます。キャラクターのページは脚本の中の人物名から作られ、ストーリーバイブルである「世界観」には、人物ごとの欲求、必要、欠点をカスタムの項目として残せます。Scenaloom AIに手伝いを頼むと、AIはその内容を読んだうえで提案します。くわしくはアウトラインとビートを読むか、プロジェクトを始めてみてください。

よくある質問

キャラクターアークの3つの種類は何ですか?

ポジティブアーク、ネガティブアーク、フラットアークの3つです。ポジティブアークでは人物が欠点を乗り越えて成長し、ネガティブアークでは転落したり、幻滅したり、変わることを拒んで代償を払ったりします。フラットアークでは人物が最初から真実を持っていて、自分ではなく周りの人や世界を変えます。

すべての登場人物にアークが必要ですか?

いいえ。主人公にはたいてい必要で、大事な脇役にも小さなアークがあると物語が豊かになりますが、端役は変わらなくてかまいません。主人公がフラットアークでも、その人のせいで誰かが変わるなら成り立ちます。どの物語にも必要なのは、どこかで何らかの変化が起きることです。

欲求(ウォント)と必要(ニード)の違いは何ですか?

欲求は、裁判に勝つ、店を守るといった、人物が自覚して追いかける外側の目標です。必要は、人を信じることを覚えるといった、満たされた自分になるための内側の変化です。欲求が筋書きを、必要がキャラクターアークを動かし、クライマックスではしばしば2つのどちらかを選ばされます。

脚本でキャラクターの成長をどう見せればいいですか?

セリフでの説明ではなく、選択で見せます。序盤の場面で欠点のせいで損をさせ、第二幕で高まる圧力の中でそれを試し、クライマックスでは変わった人にしかできない選択をさせます。ラストシーンで冒頭と響き合う場面を置くと、観客がその変化をはっきり感じられます。

フラットアークとはどういうものですか?

主人公が最初から本当のことを信じていて、圧力の中でもそれを守り続けるアークです。自分が変わるかわりに、周りの人や状況を変えます。名探偵、師匠役、長寿シリーズの主人公によく見られ、目に見える変化は脇役たちが担います。